小野不由美_『丕緒の鳥』

「小野不由美_丕緒の鳥」を読了しました。

十二国記の世界を王や麒麟ではなく、官吏や庶民の立場から描いた外伝的な短編集といったところです。「丕緒の鳥」と「落照の獄」はyom yom掲載作品、「青条の蘭」と「風信」は書き下ろしです。

「丕緒の鳥」
王宮で祭礼に伴い行われる「射儀」という儀式、その的となる「陶鵲」(陶器でできた鳥)を作る国官。

物語の舞台は慶、ここでの新王は「陽子」ということで本編とのつながりがあります。射儀なる儀式は日本の流鏑馬っぽい感じもしますが、もうちょっとファンタジックな色合いがあるもののようです。こういうのは文面からどういう儀式か想像するのが楽しいですね。それが作者の意図したものと合致しているかどうかは別として(笑) この陶鵲を通して主人公が王に民のための施政を訴えかけるために苦悩する様子が描かれます。我ら(笑)の陽子はそこのところは理解したようで明るい結末に安心しました。

「落照の獄」
非常に残虐な殺人犯を死刑にするか否かで苦慮する官吏。

現実の世界でも非常に難しい問題に正面から取り組んでいます。被害者側の感情、秩序維持の手段として、などの問題点は現実と全く同じです。私自身は①死刑を実行したとしても被害者は何ら救われない②犯人が自らの死を望んでいる場合がある、という点で死刑の効果には疑問を持っています。

「青条の蘭」
山毛欅の木が石化して枯れる奇病。その薬となる野草をやっと見出した官吏の男は厳しい環境の雪原を王のもとへ走る。

極寒の雪原を休む間もなく急ぐ話なので読んでいる方も寒く、辛くなってきます(笑) 現実の環境問題にも通じるような話で、こちらは王の不在が原因ですが、現実は人間の行いが原因ということが相違点です。性質が悪いのはこの石化した山毛欅が高価で売れるため一時的に人々に恩恵を与えるということで、この点も現実を反映しているような。。。

「風信」
陽子が登極する前の慶。前王の悪政で故郷を追われ家族を失った少女は一風変わった人たちが暮らす場所に身を寄せることになった。

このころの慶は前王の悪政、偽王と新王(陽子)の戦と、波乱の時代ですが、そんな中でも黙々と日々の仕事を続ける人々を描いています。現実から目をそらしているかのようにも見えますが、大変な時こそ当たり前のことを当たり前にやるというのが大切なんだと思います。



十二国記の世界が舞台なので現実とは直接関係はないはずなのですが特に書下ろしの2編については現実の世相を反映させるような内容になっています。この前の「華胥の幽夢」から実に12年ということでその間に現実にあったことが内容に反映されているように思えます。
スポンサーサイト



小野不由美_『残穢』

「小野不由美_残穢」(A)を読了しました。→読書リスト
作家である語り手に届いた「怖い話」の体験談。手紙の主の30代の女性は「部屋に何かがいるような気がする」と綴っていた。

藤中さんがあまりの怖さに「記事も書きたくないほど」とおっしゃっていたので「これは!」ということで読むことにしました。人気作家の新刊ということで半年ほどの図書館待ちがありました。

語り手とライターでもある手紙の主が怪奇現象の原因を地道に調べて行くのが物語の骨子です。その様は「リング」「らせん」の序盤を彷彿とさせる面白さです。語り手=作者のドキュメントタッチなのでフィクションなのかノンフィクションなのかとてもあいまいです。作者の仕事関係の人物は実在しますし、作者周辺の仕事上の出来事は事実と符合します。

ドキュメントタッチに徹しているので普通のホラー小説のような直接的な怪奇現象は起こりません。小さいものなら「気のせい」、大きいものでも「不運が重なった」「精神疾患」とかで済まされてしまうものです。ただ調査の過程でそういうものが繋がりを持って発生していることが分かってくる段ではゾゾッとしてきます。その繋がりは語り手たちも例外ではなく、調べること自体が障りの原因になっているようなので「やめたほうがいいんじゃない?」と何度も思いました。

現象の地域が大きく広がる段になって現実感が少々薄れてきました。「こんな大げさなことがあってたまるか!」って感じです。とある炭鉱が現象の元凶という流れなのですが、歴史的には戦争による大量殺戮などもっと悲惨な出来事はたくさん起きていますからねぇ。

やはり一番気になるのはこれはフィクションなのかドキュメントなのかということです。フィクションならちょっと物足りないけど、ドキュメントなら結構怖い。。。 この辺の説明がないのは作者の戦略なんでしょう。

私自身は恐怖小説や映画は好きですが、いわゆる怪奇現象は全く信じていないし体験したこともありません。なので正直そこまでは怖くありませんでした。でも読んでいる間は部屋の物音や気配にはちょっと敏感になりましたし、関係あるような夢も見たりしました。そんなこともあって、この本自体をあまり部屋に置いておきたくはありません。貸出期限は残っているけどさっさと返してこよう(笑)

表紙絵はこちら(Amazon.co.jp)

「風の海 迷宮の岸」再読

引き続き十二国記シリーズの再読です。

小野不由美_『風の海 迷宮の岸』初読の記事はこちら

【再読の感想】
アニメを見た後なので、蓬山の様子、使令、騎獣など文章では想像しにくかった部分をアニメの絵柄のイメージで読めました。もともとのホワイトハート版のイラストがアニメ調なのでグインのような違和感もありません。
饕餮を使令に下すシーンがお気に入りです。アニメでも良かったですね~

初読のときと同様、景麒の気の利かなさ加減が引っかかりました。泰麒に初めて会ったときの受け答えといい、泰麒に驍宗の正当性を教えるやり方といい、あまりにも気が利きません。この後、舒覚を失道させたり、陽子とはぐれたり、なんというか失策ばかりのような気がします。舒覚を失道させたエピソードは是非書いてもらいたいものです(笑)

通勤電車内で再読したのですが、夢中になって2回も乗り過ごしてしまいました(^_^;)

「月の影 影の海」再読

魔性の子に引き続き十二国記シリーズの再読です。

小野不由美_『月の影 影の海』初読の記事はこちら

【再読の感想】
初読の時は陽子と同じくらい右も左もわからない状態だったのでハラハラしながら読んだのですが、今回は余裕を持って読むことが出来ました。再読して楽俊と出会う前の孤独な状態が陽子を大きく変えた(というか本来の姿にした)事を特に感じました。作者もあとがきで「上巻の暗さにもメゲず」と書いているとおり確かに暗いのですが、陽子にとっては必要な試練だったのでしょう。アニメではオリジナルキャラクターを導入してこの部分を台無しにしてしまったのが残念です。ただ、アニメで人物や世界の様子を具象化してくれたのは本を読む上でプラスになりました。私の乏しい想像力では文章だけではイメージしきれない部分も多かったのです(^_^;)

「魔性の子」再読

小野不由美氏の十二国記シリーズは出版されている分は読み終わってしまったのですが、アニメを見たりして私の中で盛り上がったので(笑)再読してみることにしました。ゆっくりと読んでいればそのうち新作が出版されるのではないかと期待しています。

小野不由美_『魔性の子』 初読の記事はこちら

【再読の感想】
以前は本編の前に読んだのでわからない部分もあったのですが今回は十二国の世界を知った上なのでよく理解できました。異変に右往左往する登場人物たちを神の視点(笑)で俯瞰するのはちょっと快感です。単品でも完成されたホラーとして楽しめるのですが、このように再読すると一粒で2度美味しくて(笑)ちょっとお得です。本作の狂言回しの広瀬はアニメの杉本のキャラクターの原型のようです。本編前に外伝が書かれるという異例のスタートだった十二国記ですが本編との齟齬がほとんどないのはさすがだと思いました。きちんと構想が練られているんですね。

小野不由美_『華胥の幽夢』

「小野不由美_華胥の幽夢」を読了しました。→読書リスト
「夢を見せてあげよう」―しかし、荒廃と困窮を止められぬ国。
采王砥尚の言葉を信じ、華胥華朶の枝を抱く采麟の願いは叶うのか。
「暖かいところへ行ってみたくはないか?」―泰王驍宗の命で漣国へと赴いた泰麟。
雪に埋もれる戴国の麒麟が、そこに見たものは。
峯王仲韃の大逆を煽動した月渓は、圧政に苦しむ民を平和に導いてくれるのだろうか。
陽子が初めて心を通わせた楽俊は、いま。
希う幸福への道程を描く短編集。

「BOOK」データベースより
十二国記も最後の一冊になってしまいました。これは5編の短編集です。

・冬栄…驍宗の登極間もない戴国。泰麒が使節として漣国を訪れる。
農業に精を出す廉王がいい味を出しています(笑)

・乗月…祥瓊の故国、芳国。先の峯王(祥瓊の父)を討った月渓に景王・陽子が使者を送る。
月渓は非常に真摯な気持ちを持っているので王の資格もありそうです。

・書簡…陽子と楽俊の手紙のやりとり
二人とも相手を気遣って少しずつ無理をしている様子が微笑ましいです。

・華胥…采王・砥尚の治める才国。采麟が失道するが砥尚の側近の朱夏らには思い当たることがない。
『責難は成事にあらず』の一語に尽きます。批判は容易いがそれは何かをしたことにはならない、という事です。
正論ですがなかなか難しいことで私も日常生活の中で批判がちな態度をとることも多く反省しきりです。
例えば、今の状況で(そうでなくとも)麻○首相の代わりを私にやれといわれても当然不可能ですし~(笑)

・帰山…傾きつつある柳国。宗王の次男・利広と延王が邂逅する。
奏国は世界の様子に気を配る(かつての)アメリカのような立場なのですね~

これで十二国記の文庫化されている分は全て読み終わりましたが物語はまだまだ端緒に付いたばかりです。
慶は再建が始まったばかりですし、戴は大変な事になっています。その他、柳、芳、巧の情勢も不安定です。
文庫未収録の短編が2つありますが(私は未読)どうやら外伝的な位置づけのようです。完結はいつになるやら、
というか果たして完結するのか、という感じです。とりあえず当分は忘れることにします(笑)

昨日気付いたのですが現在Yahoo!動画十二国記のアニメが無料配信されています。
全45話の配信期間が2月23日までなので大変ですが、頑張って(笑)見るつもりです。

小野不由美_『黄昏の岸 暁の天』

「小野不由美_黄昏の岸 暁の天」を読了しました。→読書リスト
泰王 驍宗は国の再興のため力を尽くしていた。反乱を自ら鎮圧に行った驍宗の留守に泰麒は何者かに襲われ鳴蝕を起こし姿を消してしまう。同じ頃驍宗も戦場で姿を消す。戴国の将軍李斎は反逆者の汚名を着せられながら命がけで脱出し、陽子が登極して間もない慶国に支援を求める。
「風の海 迷宮の岸」の続きで「魔性の子」を十二国側から描いたものです。
「魔性の子」はそれ自体でよく出来たホラーとして完結しています。

自分の国でも反乱があったりままならない状態なのに他の国の心配をする陽子は熱いです。
シリーズ全体の主人公を張るだけの存在感がありますね~ 
十二国の王の中でも人格者である延王でさえ所詮は戦国時代の出自なので考え方が古いです。
胎果は蓬莱の新しい考え方を十二国に取り入れるためのシステムなのかもしれませんね。

陽子発案の泰麒救出作戦ではこれまでに無かった十二国の各国が共同して事に当たります。
救出作戦では氾麟、廉麟などメスの麒麟が活躍しました。オスの麒麟でも延麒六太は陽子と一緒に蓬山に行くなど大活躍ですが、目立たないのは肝心の陽子の宰輔の景麒です。台詞も少ないし…
洗練された趣味人で、自身も女性と見まごうばかりの麗人である氾王はかなり個性的です。
グイン・サーガのナリスのようなキャラクターでしょうか? あまり友達にはなりたくないタイプです(笑)

無事、泰麒は救出されましたが、これからが本当に大変です。驍宗はどこで何をしているのか?
麒麟としての能力を失った泰麒、隻腕の将軍李斎に何が出来るのか?
この話の続きはまだ出版されていないんですよね~(^_^;)

私は出版順に「魔性の子」を一番最初に読んだので泰麒の使令による混乱と救出作戦に伴う異変の区別がついていませんでした。「魔性の子」をもう一度読み直してみようと思います。

小野不由美_『図南の翼』

「小野不由美_図南の翼」を読了しました。→読書リスト

豪商の娘として何不自由なく暮らす「珠晶」は王のいない恭国の乱れを憂い、12歳の若さで王になるべく蓬山を目指す。猟尸師の「頑丘」を巻き込み、謎の若者「利広」を伴い、黄海の旅が始まる。

小野不由美氏のファンタジー作品「十二国記」の本編の第五作。

平たく言うと珠晶が苦労しながら蓬山に辿り着き麒麟に迎えられるまでの冒険の物語です。
その過程で世の中の様々な問題や矛盾を実感し、成長していく様を描きます。

十二国の世界は妖魔が出たり(日本の)現実社会より過酷ですが、人の心や振る舞いは大きくは変わりません。
珠晶の目に愚かに映る大人の行動は現実に存在し、私自身にも心当たりがあり、止むを得ない部分が大きいことだと思います。その辺の清濁を併せ呑む度量のある頑丘が非常に魅力的です。この物語の中では頑丘が一番好きですね、なんか親近感があります。

珠晶はまっすぐな心を持ち、非常に賢い少女です。そしてカリスマ性も十分に備えているようです。
そのまっすぐな心ゆえに王になったら官僚たちとの軋轢に悩みそうです。利広らのフォローは必須ですね。

妖魔の本場の黄海が舞台なので色々な妖魔が登場しました。空を飛ぶ蛇「酸與」人語を話す「人妖」などなど
なかなか面白いです。イラストが欲しいところです、いや文面から想像する方が楽しいか?(笑)

文庫で425ページと分厚いのですが読み出したらあっと言う間でした。未読の十二国記シリーズはあと2作品に
なってしまいました。どの国の物語もまだ端緒についたばかりです。続編の出版を期待したいところです。

小野不由美_『風の万里 黎明の空』

読書リストに「小野不由美_風の万里 黎明の空」を追加しました。

景王となって一年、陽子は苦悩していた。
国の実情を知らずに治世は出来ないと、市井に降り遠甫のもとでこの世界のことを学ぶことにした。

100年ほど前に蓬莱から才国に流された鈴はおなじ海客の景王に会おうと慶国に向かった。

謀反で殺害された先の峯王の娘 祥瓊は自分と同じ年頃の景王を恨み慶国を目指す。

三人の少女は慶国和州で出会い…

小野不由美氏のファンタジー作品「十二国記」の本編の第四作。

慶国和州の乱の顛末が描かれます。反乱軍の中に王がいたりしますが(笑)
乱を通じて陽子が王としての指導力を身に付け、信頼できる仲間を得るという展開です。

鈴、祥瓊は精神的な成長、心境の変化が著しいです。もっとも彼女らは見かけによらずいい歳なので
「今まで何してたのよ?」と突っ込みを入れたくもなりますが(笑)

鈴や祥瓊に比べると、苦汁を舐めた経験のある陽子は貫禄があります。そして強い!!
陽子も尚隆に負けず暴れん坊ですね~(笑)

こういう戦乱がらみの話は展開がダイナミックで非常に楽しめます。
グイン・サーガでもイシュトヴァーンによるモンゴール再興のあたりが一番好きです。

本作では固有名詞に頻繁にふりがながあるので助かります。前作までは一回目しかつかなかったので
難渋していました(^_^;)


小野不由美_『東の海神 西の滄海』

読書リスト(4)に「小野不由美_東の海神 西の滄海」を追加しました。

新王「尚隆」の登極より20年、荒廃を極めた雁州国もようやく復旧に向かいつつあった。
しかし、雁州国の西に位置する元州では謀反の動きがあった。
そんな中、延麒「六太」に古い知り合い「更夜」の訪問があった。

小野不由美氏のファンタジー作品「十二国記」の本編の第三作。

これまでも度々登場した延王 尚隆と延麒 六太の過去の話です。
尚隆が王位に就くまでの過程、元州の謀反の顛末が描かれます。

尚隆のキャラはまるで「暴れん坊将軍」です(笑)_まさか○○の○○に紛れ込むとは…
「朱衡」「帷湍」「成笙」ら側近も大変です。六太も似たような性格ですし…

反乱の首謀者「斡由」は前半の名君ぶりと終盤のメッキが剥がれた様子の落差を感じました。
尚隆の作戦勝ちということでしょうか?私も前半は斡由の方に正義を感じていました。

気にかかるのはやはり更夜です。何故、妖魔の「ろくた」は彼を養い守るのか?謎の人物です。

今でこそ豊かな国の代表のような雁州国ですが「こんな時代もあったのだなぁ」と思いました。


リンク
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
プロフィール

びぎR

Author:びぎR
読書、鑑賞日記です。
月1更新

最新記事
検索フォーム
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

月別アーカイブ