夢枕獏_『大帝の剣』

関ヶ原の戦いから間もない時代を舞台とした時代剣劇忍法SFエンターテインメント大作です。タイトルの「剣」を持つ主人公「万源九郎」を中心に、真田忍軍の生き残り、人間離れした伊賀忍者たち、宮本武蔵、天草四郎、甦った佐々木小次郎、そして二派に分かれた宇宙人(?)たちが入り乱れます。
なんでもありのエンターテインメントはカオスの連続で「作者は好き勝手やってるな~」と思いつつ引き込まれます。特に宮本武蔵、天草四郎、佐々木小次郎らのキャラクターは強烈で、主人公や宇宙人の存在感をはるかに上回ります。
終盤はSF色が壮大になりすぎたのと宇宙人の特性から話がよく見えなくなってしまいましたが、「そんなことは気にしなくてもいいのかな~」と思い物語に翻弄されることにしました(笑) 楽しかった~♪


大帝の剣5 <聖魔地獄編>
夢枕獏
スポンサーサイト



柳田邦男_『マッハの恐怖』

『昭和41年の春に日本の空で起こった3連続ジェット機事故を追求するドキュメント。』
2月4日の全日空B727羽田沖墜落を中心に、3月4日のカナダ太平洋航空DC8羽田着陸失敗、3月5日イギリス海外航空B707富士山麓墜落を追っています。著者はお得意の綿密な取材で、全日空の事故では機体の欠陥が、イギリス海外航空の事故では富士山観光飛行が、それぞれ事故に及ぼした影響を取り上げています。が、事故調査団の結論はそれを隠蔽するようなものになっているのが不気味さを感じさせます。飛行機に限らず、事故調査などのこういう本質的な部分は現在でも変わっていないような気がします。この本を読んだ感想…飛行機には乗らないほうが良さそうだ(笑)

夢枕獏_『大江戸釣客伝』

『生類憐みの令の締め付けが厳しくなる中、江戸の釣り好きたちも少なからぬ影響を受けつつあった。』
絵師の多賀朝湖、俳人の宝井其角、武士の津軽采女を中心に時代の空気を描きます。生類憐みの令で禁じられてしまうので釣りそのものの描写は意外と少なめですが、登場人物たちが個性的で魅力があります。朝湖は大江戸恐龍伝の源内のようなキャラクターで、その粋っぷりや反骨精神はなかなか痛快です。采女は綱吉の小姓にして吉良上野介を義父に持つということで時代の波をもろに受けます。釣りにも勤めにも真摯な態度は好感が持てます。また、釣りのライバル同士として登場した理兵衛と弥太夫が仲良くなっていくのは微笑ましいです。しかし何と言っても、冒頭で土左衛門として登場する投竿翁が正に絵に描いたような「釣キチ」で、ひとつの事に夢中になれるのを(地獄なのですが)羨ましく思っちゃいました。  
               

山田正紀_『人喰いの時代』

『昭和初期を舞台に、放浪する若者二人-呪師霊太郎と椹秀助が遭遇した六つの不可思議な殺人事件』
昭和12年ごろの北海道という舞台と呪師霊太郎という探偵役の名前が独特の雰囲気を醸し出します。いわゆる本格推理なので犯罪のトリックや動機は例によって「そんなもんかな~」という感じです。が、最終第六話の『人喰い博覧会』は、それまで仮名だった都市が実名になったり、登場人物の名前が微妙に違ったり、舞台が現代に移ったり、と違った展開を見せます。「どんでん返し」はおおげさだけどちょっと意表を突かれました。
     

柳田邦男_『死角 巨大事故の現場』

昭和53年~60年に防災専門誌などに掲載されたものをまとめたもので、冒頭の7篇は日航ジャンボ機墜落事故について述べています。著者得意の航空事故のほか、原発事故、高層ビル火災、船舶事故、また地震や台風など自然災害に至るまで幅広い内容です。少々古い本なのですが当時から根幹の部分は変わっていないと感じました。「消防用設備に払う金ないワ!」と消防職員に言い放ったビルオーナーがいた、という逸話が印象的です。私は「巨大システムを作らなければ事故も起こらないのでは?」と思っちゃいますが(^^;)
     

夢枕獏_『神々の山嶺』

「大江戸恐龍伝」がと~っても面白かったので他の作品を、という事で読みました。大ボラ話の大江戸~とは異なるいたって真面目な、しかし壮絶な話でした。高峰への登山は私には未知の世界でその描写だけで圧倒されます。マロリーの初登頂の証拠フィルムを追うミステリータッチの前半、その出所のかつての名クライマー羽生丈二の単独登頂を追う後半、と大きく分かれますがどちらも読みごたえがあります。「苦しくても目標のある人生っていいなぁ~」など柄にもなく思ってしまいました。まわりの人間は大変ですが(笑)
     

夢枕獏_『大江戸恐龍伝』

『平賀源内が絶滅したはずの恐龍と相対する、時空を超えた奇想天外時代小説』
タイトルからしてそそりますがさすが大御所(とは言え私の初夢枕獏)、超~面白かったです。伝記(奇)、歴史(?)、人情、謎解き、冒険、アクション、SF、怪獣(?)などなど、美味しい要素盛りだくさんです。全5巻で厚さ14.5cmの大作ですが全く長さを感じませんでした。しっかりと完結していますが色々とスピンオフが書けそうで期待しちゃったりします。難を言うと恐龍が2種類しか出ないのがちょっと寂しい。とにかく超オススメッ! 
 
 
WARNING! 以下、各巻ごとのネタバレ感想です。
・第一巻
江戸版ジュラシックパークという雰囲気を期待して読み始めました。主人公は何かと個性的な平賀源内です。源内が恐龍の化石を目撃、同時期に難破船の乗員が漂着した島で恐龍(?)に襲われる、と序盤から面白げです。その後は源内の人となりを描くのに紙面が割かれます。この巻の終盤になって両者につながりが、そしてなにやら怪しい動きも。。。というところで次に続く。
・第二巻
とにかく分厚い、そして文語が読めない、にもかかわらず高いリーダビリティです。うなぎの話、ゑれきてるの話、鉱山の話、と本筋とは直接関係ない部分も多いけれどそれが苦痛にならない、むしろ楽しいというのが凄いところです。本筋は暗号を解いたり、船を作ったり、盗賊一味と駆け引きしたり、こちらも盛りだくさんでワクワクします。急ぎ次に。。。
・第三巻
大船ゑれき丸が完成していよいよニルヤカナヤ探索が始まるという事で、これまでの「あっちうろうろ~、こっちうろうろ~」の展開が嘘のように物語が進みます。それにしても源内の人たらしの才能は凄い、この巻では沖縄の神女まで見事にたらしこんでしまいました。ついにニルヤカナヤ発見か?というところで次巻へ。盗賊一味やオランダ人たちの動向も気になります。
・第四巻
ついにニルヤカナヤに上陸です。吹っ切れた大ぼら話でストーリーはご都合主義丸出しですがそんなことは気にならない大迫力の活劇です。キャラではやっぱりでかくて強いあの子や小さくてかわいいあの子ですね~ 鴨の逸話がここに来て効いています。人間でも鉄砲使いの左馬之助なんかはいい味出してます。源内の人たらしがこれまでにも増してさく裂していて、単純な勧善懲悪にしてしまわないところが良いです。続いて最終第五巻に!
・第五巻
とにかく饕餮が哀れです。龍を江戸に連れて来るという源内の思いつきはどうにも浅はかです。が、おかげでその魅力(凶暴さ)を堪能できたので良しとします(笑) 前巻までの展開では火鼠一味がどう物語に絡むか予想出来きませんでしたが「そう来たかっ!」という感じ、一時はどうなる事かと思いました。最後の大ピンチを救うのがなんとあの○○…「忘れられちゃったの?」と寂しかった(笑)ので凄く嬉しかったです。意外なほどのハッピーエンドでしたが、荒業なりに筋が通っているので納得です。

柳田邦男_『事実の読み方』

昭和56~58年に新聞や雑誌に掲載されたエッセイをまとめたもので、国際関係、事件・事故、医療などの当時の話題に直結したものが中心です。情報関係など時代の変化に伴ってナンセンスになってしまったものもありますが現在でも有用な考え方も多く、なかなか考えさせられます。特に「誰がコロンブスを発見したか」で述べられている「ニュースには国籍がある」という言葉はなるほどと思いました。論理的でわかりやすい文章は移動中や待ち時間などに気軽に読むのにも適しています。

山崎永幸_『共犯者』

「山崎永幸_共犯者」(A-)を読了しました。→読書リスト
埼玉愛犬家連続殺人事件。犯人がなかなか挙がらなかったことには、深いワケがある。死体が絶対に現れない方法をあの男があみ出したからだ。

裏表紙より
先日見た映画「冷たい熱帯魚」の元ネタということで読んでみました。

1993年に発生した「埼玉愛犬家連続殺人事件」を共犯者『山崎』の視点から描いたものです。この事件は主犯『関根』が「ボディを透明にする」と呼んだ残虐な遺体の処理方法が衝撃的な4件の連続殺人です。関根の言葉によるとボディを透明にされた被害者は実に35人にも及ぶということです。

内容は凄惨の一語です。先に映画を見ていたので今回は衝撃は少なかったものの、このような残虐な行為を人が行い得るということはやはり驚きです。ただ、関根の言う「戦争中ならば殺したら殺しただけ誉められる。それなのに戦争がない時に人を殺せば逮捕されちゃう。」という言葉には真実が含まれているとも思いますが…

映画化に際し多くの点が変更されています。以下映画と本書との変更点、共通点を中心に書き連ねます。

舞台がドッグブリーダーから熱帯魚店に変更されています。内容が内容だけに、映像化する上でドッグブリーダーが舞台だとちょっと生々しい感じがするのでその辺の配慮だと推察します。

大きく違うのは共犯者の性格です。映画では吹越満演じる共犯者は小心者の一般市民で、でんでん演じる主犯に弱みを握られ操られるという役柄です。しかし、本書の山崎は描写の端々に堅気ではない気配があります。子供の安全をネタに脅しをかけられはしますが、元々が儲け話に誘われて関根に接近していますし、逮捕後の警官や検事に対する態度も普通じゃありません。映画では共犯者に同情することもありましたが山崎については自業自得という感が強いです。まぁ「善良な市民は実際には関根のような人物に出会う危険は少ない」と安心できるとも言えますが(笑)

主犯の描写は本書と映画とほぼ完全に一致しています。本を読んでいても関根が登場する場面ではどうしてもでんでんが頭に浮かびます。映画での主犯の台詞はこの本の関根の言葉をそのまま使っているものが多くいずれも印象的です。舞台設定、共犯者の性格、話の展開など本書と映画は異なる部分が多いのですが、主犯の描写が一致しているので全体としての印象は近いものになっています。

映画のDVDは手元にあるのですが面白いけれどあまりに胸糞悪いので2度と見るつもりはありませんでした。が、この本を読んで色々と確認したいことが出てきてしまいました。嫌だけど(笑)近々もう一度見てみようと思います。

この本は書名と著者名を変えて3回出版されています。
・「山崎永幸_共犯者」…本書
・「志麻永幸_愛犬家連続殺人」…文庫版、ペンネームを変更
・「蓮見圭一_悪魔を憐れむ歌」…ゴーストライターを務めたプロ作家の名義
元々は山崎氏からの聞き取りで蓮見氏がまとめた本のようです。なんか権利関係で揉めてこんなことになったようですが内容はほとんど同じだそうです。

話は変わりますがNHKの連続テレビ小説「あまちゃん」には「冷たい熱帯魚」の吹越満とでんでんが揃って出演しています。でんでんは人の良い漁協組合長役なんですが、どうも信用できません。もしかしたらユイちゃんのお母さんは透明にされちゃたんじゃ…?(笑)

表紙絵はこちら(Amazon.co.jp)

山岸凉子_『わたしの人形は良い人形』

「山岸凉子_わたしの人形は良い人形」(A-)を読了しました。→読書リスト


酒っちさんが「怖いマンガ」と度々お勧めしてくださっていたので読んでみました。4編入っていますが表題作が全体の半分近くを占めます。

・ネジの叫び
富豪の娘セシルが結婚する。しかし相手のジョージは実は財産目当てだった。お嬢様育ちのセシルの日課は午前10時に家宝の柱時計のネジを巻くことだった。

ガラスのように描写されるセシルの幽霊(幻?)が怖いのです。ジョージは積極的にセシルを害したわけでもないのにこの結末はちょっとかわいそうな気も… 

・わたしの人形は良い人形
物語の発端は昭和21年。転がったマリを追いかけた6歳の初子は進駐軍のジープにぶつかったのが原因で亡くなってしまう。市松人形が副葬品として一緒に葬られるはずだったが…

全焼の火事にも焼け残り、供養の炎からも復活し、ターゲットを追って瞬間移動さえする人形はやはり怖いです。元はと言えば初子のお婆ちゃんが悪いのですが… 初子の妹の姿子さんがいい味出しています。30年も人形のことを忘れていて難を逃れていたとは(笑) 世代を超えた人形の因縁はミステリーっぽくってその点でも楽しめました。でも、メッチャ怖かったかというと「まぁ、そうでもないかな~」です。私はホラーは好きだけどその手の話は実は全く信じていないので面白がりはするけれど心底怖がることはないのです。だれか「これぞっ!」っていうのを教えてください(笑)

収録作品
・千引の石
・汐の声
・ネジの叫び
・わたしの人形は良い人形

表紙絵はこちら(Amazon.co,jp)
リンク
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
プロフィール

びぎR

Author:びぎR
読書、鑑賞日記です。
月1更新

最新記事
検索フォーム
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

月別アーカイブ