M・R・ケアリー_『パンドラの少女』

『人がゾンビ化する奇病で文明が崩壊した近未来のイギリス。子供を集め教育、研究する施設に突発事態が起きる。訳ありの10歳の少女メラニー、女教師、女科学者、軍曹、兵士の5人は逃避行の末に…』
利害の一致しない登場人物が危機的状況でサバイバルする様は実にスリリングです。主人公のメラニーは存在自体や女教師への執着などかなり不穏ですが、その健気さや行動力は魅力的です。そして(意外にも)冷血な女科学者が見せるプロ根性に好感を持ちました。継承者を間違えたようですが… 奇病の原因となる冬虫夏草をモチーフにしたキノコは実在しそうで面白いです。現実の冬虫夏草の生態を詳しく知りたくなりました。
 
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P・ベンチリー_『ジョーズー顎』

あの有名な映画の原作です。鮫の接近に気がつかない、鮫視点、など序盤の描写は映画と同じでなかなかスリリングです。一方、映画には無かったフーパー(鮫学者)とブロディ(保安官)の確執が描かれます。この辺は外部の人々と現地の人々の階級格差がベースになっていて色っぽい場面が読者サービスとなっています(笑) 鮫との対決になる終盤は意外と地味です。映画ではスピルバーグがベンチリーの脚本を「つまらない」と一蹴し書き直したそうです。とは言え、私はこっちも却ってリアリティがあって好きですね~ 










*P・マーゴリン_『黒い薔薇』

http://a248.e.akamai.net/f/248/37952/1h/image.shopping.yahoo.co.jp/i/j/7andy_28395130
「フィリップ・マーゴリン_黒い薔薇」(A+)を再読しました。
1999/1/10に読了した作品。
ポートランドで3件の連続失踪事件が起こる。被害者はいずれも普通の主婦、そして現場には黒い薔薇と「去れど忘られず」の書置き。実は10年前に同様の事件がハンターズポイントで起きていたのであった。
「面白度」の記事でA+の作品としてちょっと紹介したのですが、すっかり忘れてしまっていたので再読しました。

薔薇と書置きという小道具はサイコキラーものの定番とも言えますが、ちょっと一捻りしてあります。序盤は2人の魅力的な女性を中心に物語が進みます。ベッツィは女性の立場を守る裁判で勝利を収めて注目されている人権派弁護士です。そんな彼女に弁護を依頼するのはいかにも怪しい人物で「主人公が容疑者の弁護をする」という異例の展開となります。もう一方のナンシーは10年前の事件を担当した刑事です。犯人を追ってポートランドにやってきますが、地方検事と会った直後に行方不明になってしまいます。

激動の展開の末、10年前の事件の真相と今回の事件との絡み、そして意外な真犯人が明らかにされるさまは再読にもかかわらず読みごたえがありました。中でもある人物の鬼畜ぶりが光ります(笑) 悪役に好感を持つことが多い私ですがこれはさすがに無理でした。それだけ悪役の造形が優れているということですね。

できれば最後にもうひとひねり欲しい気がしましたが、ちょっと贅沢な注文かもしれません。
面白度A+は伊達ではありませんでした(笑)

*K・グリムウッド_『ディープ・ブルー』

「ケン・グリムウッド_ディープ・ブルー」(A)を再読しました。
1997/12/28に読了した作品。
幼いころイルカと不思議な接触をした3人が、フリージャーナリスト、イルカの生態研究者、
マグロ漁船船長、として海での事件に巻き込まれていく。

イルカたちは太古の昔から海で高度な社会生活を送っていた。
そんなイルカの一頭、ク*トリルは新たな任務のために北の海に向かう。
それは「陸を歩くもの」との交流を再開する計画の一部であった。
以前再読した「リプレイ」の作中映画「星の海(スターシー)」を小説化した海洋ファンタジーです。作者のケン・グリムウッド氏(2003年没)の邦訳されている作品は「リプレイ」と「ディープ・ブルー」の2冊しかありません。

おおざっぱに言うと、イルカを人類のパートナーと位置づけるファーストコンタクトものです。擬人化されたイルカの生態、そのコミュニケーション方法、イルカを含むクジラ目の立場と役割がなかなかユニークです。

フリージャーナリストのダニエルとイルカの生態研究者のシーラは協力してイルカとの意思の疎通を試みます。
イルカの犠牲の上に生計を立てていたマグロ漁船船長のアントニオは突然イルカを殺さないことを決意し…
その一方で海中ではイルカとシャチの対立があったりして…

イルカの能力をシーラたちが解明する過程や、アントニオが悩みながら改心(?)する様子、イルカやシャチの目的は?、など序盤から中盤にかけての物語が煮詰まっていく様はとても面白いのですが、終盤はちょっと急いだ感じになってしまいました。

せっかく科学的な方法でイルカの能力を突き止めたのにテレパシーで心が通じ合うという設定が安易です。
またイルカとヒトが協力して対処する危機が、意外と地域的でしょぼいですし、地上の動物の代表としてヒトを特別扱いする点も少々不自然に感じました。ヒトは果たして地上の動物を代表する資格があるのでしょうか?

最近の研究によるとクジラ目にこのような知性はないということははっきりしているようです。
そのへんのところを書いた本も(いつになるかわかりませんが)読んでみようと思います。
「村山司、笠松不二男_ここまでわかったイルカとクジラ」
「スティーヴン ウェッブ_広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由」

とは言え、この物語の結末は希望を感じさせ、イルカたちに知性があると信じたくなりました。

表紙絵はこちら (Amazon.co.jp)

*L・ネイハム_『シャドー81』

「ルシアン・ネイハム_シャドー81」を再読しました
1980年ごろに読了した作品。
ロサンゼルスからハワイに向かうジャンボジェットに無線連絡が入る。
『PGA81便、貴旅客機はただいま乗っ取られたことを通告する』
シャドー81と名乗るジェット戦闘機に乗った犯人はいつでも旅客機を撃ち落せる状況にある。
乗員乗客201名の身代金として2000万ドルの金塊が要求された。
ハイジャックがテーマの冒険小説です。私はこれをきっかけとしてこの手の小説に目覚め、その後もっと有名な「ジャッカルの日」「鷲は舞い降りた」「レッドオクトーバーを追え」などなどたくさん読むことになるのでした。その意味ではちょっと記念碑的な意味があります。

当時模型少年だった私がこの小説に惹かれたのは何といっても犯人(=主人公)の駆る架空の戦闘爆撃機TX75Eです。イメージは当時の最新鋭機F-14トムキャット(映画トップガンに登場、マクロスのバルキリーのモデル)にハリヤー(フォークランド紛争で活躍)の垂直離着陸能力を持たせ、さらに10時間の航続時間を持たせたという感じで、夢のような高性能です。この高性能機の存在なしにこの話は成り立ちませんが、実際にはこんな戦闘機はありえないのでトンデモ小説と言っても良いのかもしれません。もちろん初読の時はそこまで考えていませんでしたが(笑)

全部で24章ですが、私が一番の見せ場だと思うのは序盤の第8章です。戦闘機を船で運ぶ途中でアメリカ海軍の戦艦ニュージャージーと遭遇します。絶体絶命のピンチを救うA~Fの頭文字の愛すべき仲間たちの活躍は爆笑ものです。また身代金の受け渡し方法もなかなか個性的です。なんと○○○が白昼堂々と強盗をするのです。「摩天楼の身代金」の受け渡し方法にそれほど大きな衝撃を受けなかったのはこちらを先に読んでいたからかもしれません。

TX75Eの超高性能以外にも突っ込みどころは多々ありますが、全体としてはとてもよく出来たスリルとサスペンス(とユーモア)にあふれた作品です。前述した戦艦ニュージャージーの他にも実在する色々な兵器への言及もプチ軍事マニア心をくすぐります。A-1スカイレーダーやOV-10ブロンコなんてマニアックすぎます。またジェット機が灯油で飛ぶ(ジェット燃料と灯油の成分はほぼ同じ)ことを知ったのもこの作品ででした。

私は学校でこの作品の読書感想文を提出しましたが、先生はどう思ったんでしょうか?(笑)
今回はいつになくマニアックな記事になってしまいました。読み流してください(^_^;)

表紙絵はこちら

*K・グリムウッド_『リプレイ』

「ケン・グリムウッド_リプレイ」を再読しました。→私が好きな本!
1994年以前に読了した作品。
1988年、ラジオディレクターのジェフは心臓麻痺で死んだ。享年43歳。

気がついたときは1963年、18歳のジェフは学生寮のベッドの中にいた。
記憶と知識は元のまま、自身の体と周囲の環境は25年前。競馬と株でたちまち大金持ちになる。
以前記事にした「マイナス・ゼロ」「リセット」のような時間がらみのSFファンタジーです。
このテーマは私の好物なんですよね~

誰もが思う「あの時こうしていれば…」という夢を地で行っています。初読の時は若かったのでこの設定は素晴らしく思えましたが、今となっては「人生どう転ぶかわからない」と悟ったのでそれほど羨ましくは思いません。
また、株や投資、競馬の知識も無いので「もしも」のときにもチャンスをふいにしそうです。今から勉強しておきましょうか(笑)

設定自体はありふれているとも言えるのですが、ある仕掛けによって非常にドラマチックに展開します。
基本的には思考実験的なSFファンタジーなのですが、哀しく切ないラブストーリーの側面も持っています。
言わば「時空を超えた愛」ってやつです(笑) 気恥ずかいので恋愛小説は読まない私ですが、この愛の行方には結構気を揉みました。比較的穏便な、しかし読者にも希望を与えるような結末も秀逸です。

作中に架空の映画「星の海(スターシー)」が登場します。物語の転機となる非常に重要な要素なのですが、この映画のストーリーが作者の「ディープブルー」と似ています。ディープブルーの方が後の作品なのでここでのアイデアを膨らませたのでしょうね。私もディープブルーを後に読んだので初読のときは(当然)気付きませんでしたが今回はニヤリとしました。

少々物足りなく思ったのはこの現象の原因が明示されないことです。ファンタジーなので必要の無いことなのでしょうが私が好きな「トンデモな説明への驚き」という要素はこの作品にはありません。一応、ある登場人物が説明をしてはいますが… また、引っ掛かるのは意味ありげな「今度はだめだ。待て」のメッセージです(p303)。
結局なんだったのかわかりません。既読の方、その後何かありましたっけ?

内容をほとんど忘れていて再読にもかかわらずとても楽しめました。
読書仲間のめにいさんも絶賛なので自信を持ってオススメします。未読の方は是非っ!

M・ルブラン 『怪盗紳士リュパン』

読書リスト(3)に「モーリス・ルブラン 怪盗紳士リュパン」を追加しました。

フランスからアメリカに向かう客船プロヴァンス号に無線が入った。《貴船一等客室ニあるせーぬ・りゅぱんアリ。・・・》乗客たちが動揺するなか盗難事件が発生する。…アルセーヌ・リュパンの逮捕

怪盗紳士リュパンのデビュー作となる短編集。

現在ギャオではルパン三世 1st シリーズが放送されています。アニメは楽しく鑑賞していますが、元祖ルパンを読んでいない事に気がつきました。そこで元祖ルパンのデビュー作を読んでみました。

一般的には「ルパン」と表記されることが多いのですが創元推理文庫では「リュパン」と表記されています。

今回読んだ範囲では意外とルパンⅢ世に近い雰囲気を感じました。人を喰ったような態度、女性には非常に親切なところ、などは血は争えないと思えます。名前だけじゃなく作風もちゃんと投影されているのですね。

リュパンの初登場作「アルセーヌ・リュパンの逮捕」ではちょっとしたトリックが使われています。今では珍しくない手法ですが油断していたのですっかり騙されてしまいました。侮りがたしリュパン(笑)。

●収録作品
「アルセーヌ・リュパンの逮捕」
「獄中のアルセーヌ・リュパン」
「アルセーヌ・リュパンの脱走」
「奇怪な旅行者」
「女王の首飾り」
「ハートの7」
「彷徨する死霊」
「遅かりしシャーロック・ホームズ」

M・クライトン 『大列車強盗』

読書リスト(3)に「大列車強盗  マイクル・クライトン」を追加しました。

1850年代ロンドン、エドワード・ピアースは列車で輸送されるクリミア戦争の戦費を強奪する計画を立てた。
ピアーズ一味は着々と準備を重ねていった。

ジュラシックパークで有名なマイクル・クライトンが19世紀のイギリスを舞台に列車強盗をドキュメンタリータッチで描いています。

まず、文体に特徴があります。まるで実際にあった事件の記録のような書き方になっています。
果たして取材に基づいたドキュメンタリーなのか、フィクションなのか惑わされます。

ヴィクトリア女王時代という背景が面白い。男中心の社会、身分差別という古い風習、鉄道を始めとする工業化の進展とそれに伴って発生した貧富の格差、などが描写されています。犯罪の背景も現在と大きく違います。警報装置、防犯カメラなどはなく情報の伝達も極めて緩慢。マンパワーに頼った防犯体制とそれを崩そうとする犯罪者のせめぎ合いが展開されます。

ただし、ドキュメンタリータッチなだけに各人物の描写は表層的です。個性的な怪盗ピアーズがもっと魅力的に
描かれていればもっとのめり込める題材なので、その点は残念に思いました。
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