*広瀬正_『タイムマシンのつくり方』

「広瀬正_タイムマシンのつくり方」を再読しました。
1994年以前に読了した作品。
由緒正しい大泥棒、石川五右衛門の子孫の五助は横町の角にエンジンをかけっぱなしの妙な格好の自動車をみつける。その自動車の正体は実はタイムマシンであった。

タイムマシンはつきるとも
広瀬正氏の初期のSF短編のほとんどが収録された短編集で24編のショートショート、短編と1編のエッセイという構成です。著者が「マイナス・ゼロ」で名をあげる前に書かれ同人誌「宇宙塵」で発表されたものが中心になっています。

数が多いだけにさすがに玉石混淆の感もあり、なかには熟成不足で平凡な作品やオチが意味不明な作品もありました。しかし、氏がこだわりを持つタイムマシンものはやはりひとひねり効いていました。

〈ザ・タイムマシン〉と〈UMAKUITTARAONAGUSAMI〉はその実験的な表記方法が印象的です。前者の並列表記は他にもあってもよさそうだけど実際に見たのは初めてです。後者の「行って来い」(?)表記は読み方が難しくて少し迷いました。

タイムマシンものの中では〈タイムマシンはつきるとも〉の仕掛けに感心しました。「そもそもそのタイムマシンはどこから来たのか?」という謎は「マイナス・ゼロ」のアイディアの原型になったのかもしれません。

〈化石の街〉は人が静止したまま動かない街に迷い込んだ男の話です。男が科学者らしい視点で真相にたどりつく過程が面白いです。実は我々の世界にも高速移動人が紛れ込んでいて、それに気がつかないだけかも…

〈鷹の子〉は珍しくホラー調の話です。非常に陰惨な話ですが「左官屋はうまくやったな」と思いました(笑)。

〈「時の門」を開く〉はハインラインの「時の門」を研究したエッセイです。「時の門」は未読なので今回は読み飛ばしましたが、現在は入手可能で図書館にもあるので近々併せて熟読するつもりです。

「マイナス・ゼロ」から始めた広瀬正作品再読ですがこれで終了です。初読はずいぶん前だったのですっかり忘れていてとっても楽しめました。また15年後くらいに読もうっと(笑)

・収録作品
ザ・タイムマシン, Once Upon A Time Machine, 化石の街, 計画, オン・ザ・ダブル, 異聞風来山人, 敵艦見ユ, 二重人格, 記憶消失薬, あるスキャンダル, 鷹の子, もの, 鏡, UMAKUITTARAONAGUSAMI, 発作, おうむ, タイム・セッション, 人形の家, 星の彼方の空遠く, タイムマシンはつきるとも, 地球のみなさん, にくまれるやつ, みんなで知ろう, タイムメール, 『時の門』を開く

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書庫「広瀬正」

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*広瀬正_『ツィス』

「広瀬正_ツィス」を再読しました。
1994年以前に読了した作品。
発端は神奈川県C市。精神科医の秋葉はのり子から極々小さいツィス音(557Hz)が聴こえると相談を受ける。普通の人には聞こえないような小さい音であったが来日していた著名なバイオリニストが演奏を突如中止したり、徐々に社会に影響を及ぼすようになる。

「マイナス・ゼロ」を最初に読んだころ(20年くらい前)に読んだのですが面白かった印象は残っているものの、結末がどうなっているのかすっかり忘れていました。

学生時代に音楽をちょっとかじっていたので音絡みってことでまず興味をそそられます。作者の広瀬正氏はジャズ奏者という面も持っているのでその辺の描写も良い感じです。音楽家が常人より音に敏感で真っ先に影響を受けるという点もそれらしいです。もっとも私自身はあまり耳がよくないので実際にツィス音が聴こえ始めたとしても後の方になりそうですが(笑)

ツィス音に対する調査や対策を講じる様子がウルトラマンなどの特撮テレビシリーズのような雰囲気で好みです。ま、相手は怪獣じゃなくて(直接的には)無害な音ですが。また発端となる神奈川県C市(茅ヶ崎市?)が身近な場所なのもちょっとニヤリとするポイントでした。

ツィス音は徐々に日常生活に支障が出るほど大きくなりその影響は東京にもおよび、都民の集団疎開という事態に発展します。この疎開の描写が妙にリアルで、こだわりを感じました。実際に何か危機が発生し都民の疎開が必要になった時にはこのやり方は参考になるかもしれません(笑)

で、問題の結末ですが、これはさすがに「いくらなんでも」って感じがしました。この結末では説明しきれないような事も結構あった気がします。この説を提唱している人物もなんか怪しいし… もっとも何が正解なのか明快には示していないので一種のリドル・ストーリーなのかもしれません。

ツィス音ってどういう音なのか聞きたかったので何か方法がないか探してみました。
可聴周波数域チェッカ→http://masudayoshihiro.jp/software/mamimi.php
こういう用途のソフトじゃないけど(笑)近い音を聞くことは出来ました。

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*広瀬正_『エロス─もう一つの過去』


「広瀬正_エロス─もう一つの過去」を再読しました。
1994年以前に読了した作品。
デビュー37年のベテラン歌手 橘百合子は“もしもあのとき”という雑誌のアンケートを受け思いを馳せる。―「もしも昭和9年9月20日、私が映画を見に行かなかったら…」
時間SF、近代の風俗、などに並々ならぬこだわりを持つ作者が描く歴史ifものと言ってもよいでしょうか。

物語は昭和9年から始まり戦争の足音が聞こえてくる時代なのですが、よくある歴史ifものとは趣が異なります。橘百合子(本名:赤井みつ子)と帝大生:片桐慎一を取り巻く比較的普通な生活が描かれます。「百合子が映画を見に行かなかった」世界がifの歴史として語られますが、決して派手なものじゃなく、彼らの生活を通して当時の風俗を丹念に描いていきます。この辺の描写へのこだわりは作者得意のもので実際には目にしたことがない私にも懐かしさを感じさせるものです。少年時代の作者自身も登場し、慎一に「これでは何一つ大成できないだろう」と思われるあたりは遊びっけたっぷりです。

再読にもかかわらずストーリーの大半を忘れていたので「SF的な展開はいつ出てくるんだろう?」と思って読んでいたのですが、最終章になってやっとその姿を現わします。ネタばれになるので書けませんが正に逆転の発想で、これをやるためにここまで書いたのかという感じです。まぁ、プチ○○ヲタの私としては「○○○○○があったからって○○自体の結果が変わるか?」というのは大いに疑問ではありますが(笑)

タイトルの「エロス」は作中に出てくる曲の題名で、エッチな意味は全くありません。今回私は主に電車の中で読んだのですがあえてブックカバーをつけませんでした。これはもしかして公共の場でのセクハラでしょうか?(笑)

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書庫「広瀬正」

広瀬正_『T型フォード殺人事件』

「広瀬正_T型フォード殺人事件」(A-)を読了しました→読書リスト
台風の夜、白瀬は泉大三の自宅に招かれる。他にも客が招かれていて、泉の娘ユカリを含め7人の男女が集まっていた。ここで日本に5台しかないリストアされた1924年製のT型フォードが披露される。
実はこの車は曰くつきで…

T型フォード殺人事件
SF・推理作家、ジャズ奏者、クラシックカーモデル製作家の3つの顔を持つ広瀬正氏の遺作の表題作の他2編を収録しています。私は作者の作品は全て読んだと思っていたので再読のつもりで読み始めました。しかし、作者の本職である模型製作やT型フォードに関する薀蓄を読むうちに「こんな強烈な内容を覚えていないわけがない」ということで初読と判断しました(^_^;)

【T型フォード殺人事件】
作者は「マイナス・ゼロ」を代表とする時間ものを得意とするSF作家のイメージが強いのですが、この作品は密室を扱った本格推理です。

リストアされたT型フォードの前に集まった人々の前で46年前のこの車にまつわる殺人事件の謎が語られます。
この部分は作者の他の作品同様「古きよき時代」に対するノスタルジーが満載です。そして出席者にその謎解きを求めるという展開になり、その過程で新たな事件が起こります。

終盤にちょっとした○○トリックが用意されていて読んでいた私はすっかり混乱させられました。はっきり書いてあるし、途中で気が付くようになっているし、最後にはちゃんと種明かしがされているのですが、見事に一本とられました。登場人物の年齢の関係に少々腑に落ちない部分があるのですが、もしかしたら錯誤を誘うテクニックにまんまと引っかかっているだけかもしれません。

私は本格にはあまり相性が良くないのですが、これは楽しめました。少々怪しい人物を一堂に集めたり、登場人物に謎解きをさせたり、という作り物めいた設定はあるものの、薀蓄やノスタルジックな描写が上手く織り交ぜられあまり不自然さを感じませんでした。

【殺そうとした】
作者の処女短編。交通事故に見せかけた殺人を扱ったミステリーです。
地味ですが実用的(笑)なトリックです。ただし、相手を選ばないと…

【立体交差】
作者得意の時間ものSF。「T型フォード殺人事件」と同時期に書かれたものです。
2種類用意された結末がなかなか効果的です。しかし、2つ目の結末に至る主人公は余程○った○○が嫌だったのでしょうか?そうじゃないとしても気持ちはわからないでもないですが。


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*広瀬正_『鏡の国のアリス』

「広瀬正_鏡の国のアリス」を再読しました。
1994年以前に読了した作品。
銭湯で湯につかっていた木崎浩一はいつのまにか自分が女湯にいることに気付いた。
なんとか逃げ出すがタバコ屋がいつの間にか引っ越していたり、町の様子がどうもおかしい。
女湯のぞきの罪で警察に突き出された彼が事情を説明すると朝比奈という人物を紹介される。

鏡の国のアリス
4編の作品集ですが全体の7割は表題作が占めています。

左右が逆の世界つまり「鏡の国」に来てしまった青年の顛末が語られます。
本家(私は未読)では鏡の国はファンタジックな世界のようですが、本作では左右の違い以外はほぼ同じです。
地理は左右逆、左利きの人(こちらでは右利きと呼ぶ)が主流、文字は鏡文字といった具合です。


鏡の不思議な性質について色々と解説が加えられます。
「鏡は左右が逆になるが、何故上下は逆にならないか?」などは素朴ですがなかなか即答できない疑問です。特に第三章5の鏡を使った実験が面白く、読んだだけではよくわからないので実際にやってみました。鏡の世界では分子レベルでも左右逆になるので食べ物は栄養にならないとか、素粒子レベルで考えると反物質になるので大爆発してしまうとか、そういう思考実験的遊戯が展開されます。また左右対称の建築物は魔除けのためわざと一部に非対称な部分を作っているとかそういう豆知識も披露されています。

木崎青年は朝比奈氏の保護下で割りとのんきに過ごします。
栄養失調になったり、爆発したり、異分子として迫害されたり、とかのサスペンスに富んだ展開にはならず、
デートしたり、劇をやったり、音楽コンクールに出たり、します。
果たして彼は元の世界に戻れるのか?という最大の関心事には脱力系の結末が(笑)

収録作品
・鏡の国のアリス
・フォボスとディモス
ユミは火星から帰ってきた宇宙飛行士の恋人に再会するが、彼はまるで別人のようだった
・遊覧バスは何を見た
1925年東京観光に来た若夫婦は達吉一家の世話になる。やがて月日が流れ…
・おねえさんはあそこに
ハルオはやさしいおねえさん、お父さんに囲まれて幸せだったが…

*広瀬正_『マイナス・ゼロ』

私が好きな本!に「広瀬正_マイナス・ゼロ」を追加しました。
1994年以前に読了した作品。

昭和20年5月25日、東京は米軍の空襲を受けた。中学2年の浜田俊夫は隣に住む大学教授伊沢から臨終
間際の頼みごとをされる。その頼みとは18年後の午前零時に教授の研究室を訪れることであった。

この本は随分前に読みました。読書リストの通しナンバーは1995/4/23(おっとちょうど12年前!)を起点にして
いますが、それ以前です。友人の勧めで読み、大変面白かったのでその後作者の作品は全て読みました。
私が好きな本!で紹介したので記事を書くために今回読み返してみました。

簡単に言うとタイムマシンを駆って時間旅行をするタイムトラベルものです。戦争と時間が絡む点で先日読んだ
「リセット」との共通点がありますね(笑)_しかしこの作品は正統派の(ハードではありませんが)SFです。

タイムパラドックスを扱った思考実験的遊戯が展開されます。行動と結果の因果関係、人物の関係など遊び心
に満ちています。油断しているとすっかり騙されてしまいます。私は再読にもかかわらずまた騙されました。
また、「古きよき時代」に対するノスタルジーも満載です。古い作品(昭和45年)なので「現代」が昭和38年に設定
されていて、その部分でも妙にノスタルジックです。なにしろ最新のテクノロジーがカラーテレビですから(笑)
ところどころではさまれるユーモアも秀逸です。

今回この作品を読み返してひとつ収穫がありました。それは「ほとんど覚えていなかった」ということです。
昔読んで面白かった作品はもう一度同じように楽しめそうです。記憶力の悪さ(衰え?)に感謝です(笑)
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