鈴木光司_『タイド』

「鈴木光司_タイド」(A-)を読了しました。
予備校の数学教師である柏田は一人の女子生徒から相談を受ける。原因不明の病気で意識不明となった友人から送られた暗号文を解読してほしいというのだ。
作者のドル箱「リング」シリーズの最新作ということで、時系列的には「ループ」と「エス」の間に入るもののようです。もっともこの話で時系列とか因果関係とかそういうものに意味があるのかどうかは疑問の残るところです(笑)

柏田の正体はシリーズ常連の○○○○でそれは本人も自覚しています。当然暗号解読などはお手の物であっという間に解読してしまいますが、それが実は…、という展開です。で、いろいろ調査していくうちに意外な真実が明らかになっていきます。その間に洞窟の落盤であわや生き埋めになりそうになったり、柏田のそっくりさんが登場して主人公交代(?)の仕掛けがあったり、と紆余曲折があります。

「エス」同様「ループ」での超絶なネタバラシがあるので読む方としてはどうしても一歩引いてしまいます。柏田もそのことは知っているのに投げやりにならずに真面目に生きているのが私には少々不自然に思えます。私ならあんなことを知っていたらバカバカしくてやってられませんから(笑)

終盤、柏田たちは大峰奥駆修行に参加します。その行程の最後にある人物と出会ってこの物語は終わります。それは良いとして、この部分は作者自身が参加した(と推測される)修行の内容を描くためにあるような雰囲気です。物語とはあまり関係ないような。。。
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鈴木光司_『エス』

「鈴木光司_エス」(A-)を読了しました。→読書リスト
CG画像制作を仕事とする安藤のもとに自殺の実況動画が持ち込まれる。専門家としてその真偽を分析してほしいというのだ。安藤は早速とりかかるがその動画に怪現象が起こる。一方、安藤と恋人の茜は妊娠をきっかけに結婚への準備を始め、幸せと言ってもよい状況だった。しかし、茜は何者かに監視されているという不安を感じるようになっていた。
「リング」「らせん」同様に日常の中に怪異が忍び寄る序盤の描写は見事です。何かが起こっているけどそれが何だかわからないという不安を読者も登場人物と共有できます。ただしシリーズ前作の「ループ」で恐怖をすっかり興醒めにしてしまう仕掛けをしてしまっているので読者の方は「どうせこれも○○○○の話なんだろう」と一歩引いてしまいます。いっそのことループを読まないでリング、らせん、エスの順番で読んだ方が良いのかもしれません。が、それはそれで終盤の展開が意味不明になってしまいますし…

それでも前作までのことを登場人物が認識して驚くさまはニヤニヤさせられますし、妊娠のタイミングからして生まれてくる子供が殺人鬼の生まれ変わりなのではないかと匂わせたりする鬼畜な展開にワクワクしたり(笑)と、「どうなるのか?」となかなか読ませる力はあります。

しかし、終盤の謎解きはあまりにもバタバタ急いだ感じでした。少女連続殺人の真犯人の正体は唐突で無理やりですし、自殺動画の人物の正体もちょっと不自然です。そもそもその人物は「ハッピーバースデー」では異なった最期を迎えたはずですし… ヒロインである茜の正体も明かされますが、これが「いや、それは、抹殺した方がいいんじゃない?」と思ってしまう不気味なものです。主人公たちは結局無事でハッピーエンドって体になっていますが、私にはそうは思えぬ後味の悪さが残りました。まぁ、これが狙いならばアリですし成功しているとも言えますが… 

特に終盤は勢いに任せて書いたという感じで色々とつじつまの合わないところが多くなっています。その辺を飲み込むことができるかというところですが、私は「あれー、おっかしいなぁ」などと突っ込みつつ結構楽しく読めました。

表紙絵はこちら(Amazon.co.jp)

*鈴木光司_『バースデイ』

「鈴木光司_バースデイ」を再読しました。
2000/1/17に読了した作品

リングシリーズの最新作「エス」を読む前の復習ということでの再読です。「リング」「らせん」「ループ」でリング三部作だと思っていたのですが、この短編集も仲間でした。

・空に浮かぶ棺
高山竜二の教え子の高野舞の最期、そして再生貞子の誕生を描く短編です。タイトル通り都会の高所が最期の場所となってしまった舞は実に哀れです。映画と同じく中谷美紀で映像化してほしいものですが動きが少なくて地味かなぁ(笑)

・レモンハート
舞台女優だったころの貞子の様子を描いた短編です。生きている貞子もその特殊な能力に由来するであろう不気味さと妖しい魅力を持っています。こちらは仲間由紀恵主演で映画「リング0 バースデイ」になっています。

・ハッピー・バースデイ
ループの直接の続編となる短編です。ループの主人公である馨の子供を身ごもった礼子の出産までの話です。前の2つの話が「礼子がループ界を覗いた映像」という体になっているのはいかにもループっぽい話です。話のトーンは最終的に生命礼賛といったところに落ち着いています。ただ、この結論は馨の正体などを考えると少々胡散臭い気がするのは私だけではないはずです。

7月に図書館に予約した「エス」の順番がやっとまわってきました。結構待たされましたが、既刊の再読が終わったところでちょうど良かった感じです。過度の期待をせずに(笑)読み始めます。

表紙絵はこちら(Amazon.co.jp)

*鈴木光司_『ループ』

「鈴木光司_ループ」を再読しました。
1998/5/17に読了した作品
科学者の父親と穏和な母親に育てられた医学生の馨にとって家族は何ものにも替えがたいものだった。しかし父親が新種のガンウィルスに侵され発病、馨の恋人も蔓延するウィルスに感染し今や世界は存亡の危機に立たされた。ウィルスはいったいどこからやって来たのか? あるプロジェクトとの関連を知った馨は一人アメリカの砂漠を疾走するが…。

裏表紙より
「らせん」に引き続きリングシリーズの最新作「エス」を読む前の復習ということでの再読です。

「リング」「らせん」で描かれる超常現象(=貞子の存在)に科学的、合理的な説明を与える。というのが柱になっています。この「科学的、合理的な説明」っていうのがかなりぶっ飛んだもので「らせん」で広げた大風呂敷を大胆に回収して(もしくはぶっ壊して)います。しかし、『色々な点』でまだまだ科学的、合理的ではない部分も残されて、この辺の曖昧さを含めての不思議さがこの作品の魅力とも言えます。

『色々な点』の内容についてはネタバレなので以下に反転文字で
コンピュータの中に現実とたがわぬ世界を構築できる、仮想空間の人物を現実世界に誕生させる、仮想空間から現実世界にウィルスが蔓延する、サダコウィルスの発生源が結局判明しない、などなど
今作でも「らせん」に負けない大風呂敷を広げます。それは既存のSF作品でも度々テーマになっている世界の存在自体に踏み込むものです。馨たちが暮らす小説内の世界はもちろん作者が創造したものですが、私たちが暮らす本当の(?)世界はどうなんだろう?という不安をあおられたりもします。

「呪いのビデオ」という都市伝説的なテーマから始まったリングシリーズはなかなか壮大なホラ話に発展していきました。「らせん」に比べてもホラー色は薄れて「リング」の続編というイメージで読むとがっかりするかもしれませんし、そういう評判も多いのも事実です。しかし、ホラーとSF、さらには人間ドラマまでのハイブリッドとも言えるこの展開は着地点が見えないジェットコースターのようでエンターテインメントとしては一級品です。ホラーが苦手でこのシリーズに手を付けていない方も是非セットで読むことをお勧めします。

一点(だけじゃないけどw)引っかかるのは終盤に明かされる馨の正体です。発表時期がちょうど映画「リング」「らせん」の公開時期と重なった影響かもしれませんが… これもネタバレなので以下に反転文字で。
馨は高山竜二の生まれ変わり(?)なのですが原作小説の高山竜二の描写【「首回りの肉が二重に浮かび上がる」「暑苦しい顔」と描写される「自称レイプ魔」】とはどうしてもイメージが重なりません。作者も映画のイメージ(真田広之)に合わせてキャラ設定をしてしまったのでしょうか?
これで既読のリングシリーズの再読は終わったと思っていたのですが短編集の「バースデイ」が残っていました。「エス」の予約待ちがまだ6番目なのでそれまでに再読しようと思います。

表紙絵はこちら(Amazon.co.jp)

*鈴木光司_『らせん』

「鈴木光司_らせん」を再読しました。
1996/10/19に読了した作品
解剖医の安藤は医学部時代の同級生の高山竜司の遺体を解剖することになった。解剖終了後内臓代わりに詰め込んだ新聞紙が腹から飛び出した。そこに書かれた数字「178 136」が意味するのは…
リングシリーズの最新作「エス」が出ていることを藤中さんの記事で知ったので早速図書館に予約を入れました。予約待ちが14番なのでその間に復習ということで旧シリーズを再読することにしました。「リング」は2007年に再読済みなので今回は「らせん」からです。

「リング」の最後で判明したと思われた呪いの解きかたが間違っていた、というところが最大の謎です。今作の語り手の安藤がリングの語り手の浅川の手記を手に入れ、呪いの解きかたが間違っていたのならば浅川や高野舞は何故死なないのか?という疑問を(よせばいいのにw)解き明かそうとします。

暗号が重要なギミックになっています。上の「178 136」は可愛い物なんですが、もう一つの暗号は「暗号解読」にも出て来そうな凝ったものです。しかもその送信方法がかな~りのトンデモで…再読ながら目が点になりました。

そして何よりも怖いのは小説や映画の「リング」の持つ力です。まぁ、小説が出版されたり映画が公開されたりしてからずいぶん経つので今更心配することはないのですが、初読のときは(半分)本気で心配したものです(笑)

高山竜司(演・真田広之)の体から暗号の紙が出てくる、高野舞(演・中谷美紀)が○○を××する、以外はほとんど覚えていませんでした(笑) 「リング」に比べるとかなりダイナミックで大風呂敷な展開で楽しく再読しました。あとは「ループ」をよんで「エス」を待ちます。

表紙絵はこちら( 文庫シェルフ)

鈴木光司_『鋼鉄の叫び』

「鈴木光司_鋼鉄の叫び」(B+)を読了しました。→読書リスト
テレビプロデューサーの雪島は不倫相手の菜都子から入手したはがきをもとに特攻隊をテーマにした番組企画のキーとなる人物を探し出そうとする。はがきでふれられている「自分の意思で編隊を離脱して生還を遂げた特攻隊員」こそがまさにうってつけの人物なのだ。
雪島と菜都子の不倫の行方と、「自分の意思で編隊を離脱して生還を遂げた特攻隊員」の探索、が並行して語られる形になっています。特攻隊員のパートは雪島の父親の戦時中の体験談と、その命の恩人である特攻隊員の手記が中心となっています。

並行して語られる不倫の話は私にとっては限りなくどうでも良い話で(笑)ただの狂言回しとしか感じませんでした。ただ菜都子の夫の行った脅しは特攻っぽい方法でなかなか効果的なのでここでメインテーマと繋がっているのかとも思いましたが…

特攻隊員のパートでは「自分の意思で編隊を離脱して」ってところがキモだと思うのですが手記を読む限りでは「いろいろな条件が重なった上でやむを得ず」としか思えません。特攻隊員自身は確かに思うところはあったのでしょうが結局立場を逸脱した行為はしていません。結果的に「運が良かった」という感じです。

「リング」シリーズのイメージでホラー作家のイメージが強い鈴木光司氏ですがこの作品では超常現象は出てきません。まぁ、偶然の重なるご都合主義的な展開が超常現象と言えないこともないですが…(笑) ところで現時点でこの作品に対するアマゾンのカスタマーレビューが全くないのは何故なんでしょう?

以下素朴な疑問です。ちょいマニアックかも、読み飛ばしてください(笑)
なぜタイトルが「鋼鉄」の叫びなんでしょう?軍艦や戦車ならともかく戦闘機に鋼鉄ってほとんど使われてないと思うんですけど… 単に戦争の象徴なのかな?
零戦の型式がマイナーな22型っていうのがちょっと不自然です。終戦間近なら普通は52型、または中島飛行機で遅くまで生産されていた21型ならまだ納得いくんですが…。

鈴木光司_『エッジ』

「鈴木光司_エッジ」(A-)を読了しました。→読書リスト
理由のわからない失踪事件が頻発する。フリーライターの冴子は調査を始める。彼女の父親も18年前に忽然と消息を絶っていたのだった。
一方、遠方の恒星が突然消滅する、πの計算結果に0が並ぶ、など科学的な異変が観測される。
傑作「リング」の作者による10年ぶりの長編ホラー小説です。なんか最近は主夫業に専念したり、子育てのエッセイを書いたりしていたようですがやっと「こっちの世界」に復帰してくれたようです。

冴子がテレビ番組のスタッフとして失踪者の調査を行う前半は地味ながらリングを彷彿とさせる展開です。犯罪被害にあった、家族内のトラブル、借金苦の夜逃げ、など現実的な失踪理由を潰していく過程はミステリータッチでなかなか読みごたえがあります。ただ、プロローグで超常現象であるとネタばれをしてしまって効果半減なのが少々残念です。

上巻の最後に起こる事件から物語は個人の失踪事件から未曾有の規模のカタストロフィに発展します。古代遺跡に見られるオーパーツやオーバーテクノロジー、マリー・セレスト号などの歴史上の失踪事件、果ては生物の発生、進化などなどの科学用語を駆使(濫用?)して一連の事件の真相が語られます。私は途中までは少しずつ読んでいたのですがこの部分に入ってからはパワーに圧倒され一気読みしました。ただし、(濫用?)と書いたようにその内容はかなりハチャメチャです。比較的緻密だった前半の展開に比べると少々ギャップを感じます。科学用語の濫用は知らない人には無意味ですし、(私のように)ちょっと知っていると疑問が残りますし、よく知っている人には(たぶん)噴飯ものなのだと思われます。ある人物の正体はあんまりですし、カタストロフィからの脱出方法と行き先は安易ですし、他にも突っ込みどころは多々あります。しかし既存の物理学が成立しなくなる「相転移」がキモなので、科学的、論理的におかしくても問題ないのかもしれません(笑)

ハチャメチャさ加減を含めてB級ホラーとして十分に楽しめました。ただ、アマゾンの作者自身による宣伝動画をみると「そこまで言うか?」という感じもしますが(笑) リングのようなおどろおどろしさはないので鈴木光司入門には良いと思います。

表紙絵はこちら

*鈴木光司_『リング』

私が好きな本!に「鈴木光司_リング」を追加しました。
1996/10/9に読了した作品

雑誌記者の「浅川」はタクシーの運転手から路上で突然死した若者の話を聞いた。
実は同日同時刻、浅川の17歳の姪も突然死していた。
もう2名の男女が同日同時刻に突然死していたことを発見した浅川は4人の接点を探り出すが…

映画、ドラマであまりにも有名な作品です。私がこの作品を知ったのは「とても怖いビデオがある」という噂を聞いたからでした。例によって私は先に原作に手を伸ばしたのでした。

最初に読んだときは先が気になって夢中で読みました。続いて当時刊行されていた続編の「らせん」も読んでしまいました。夢にも見るくらい怖かった記憶があります。特に「らせん」を読んでいるときは「リング」を読んだことを後悔したほどです(笑)

今回読み直して、一般に広まっている「恐怖の貞子」というイメージとは原作では全く違うことを再認識しました。
浅川自身は直接的な恐怖体験はしませんし、他の人物も例の「貞子」に襲われるようなことはありません。
ミステリータッチで淡々と物語が進みます。そのなかで徐々に山村貞子の存在が浮かびあがるという趣向です。

あとは準主人公の「高山竜司」のキャラクターです。ビデオでも映画でもなかなかいい男が演じているのですが、
原作では「首回りの肉が二重に浮かび上がる」「暑苦しい顔」と描写される「自称レイプ魔」なのです。
強烈な個性で物語をグイグイ引っ張ります。

「リング」「らせん」「ループ」で物語が完結します。最終の「ループ」では全てに合理的な説明がされます。
かなり荒業ですが…


ビデオ 「リング」→アマゾン

1995年に2時間スペシャルドラマで放映されたものをビデオ化したもの
キャスト
浅川和行:高橋克典
高山竜司:原田芳雄

私は原作を読んでから見ました。高山のキャラ以外はほぼ原作に忠実です。噂に違わぬ「恐怖のビデオ」で
「地上波で流すかぁ?」という内容でした。残念ながら現在は入手困難のようです。


映画 「リング」→アマゾン

1998年に公開された映画
キャスト
浅川玲子:松嶋菜々子
高山竜司:真田広之

公開されたときに見に行きました。浅川が女性だったり、高山を演じているのが真田広之だったり、
貞子がブラウン管から這い出てきたり、色々原作とは違いましたが、これはこれで楽しめました。
貞子についてはこちらのイメージが一般的ですね。
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