瀬名秀明_『小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団』

「瀬名秀明_小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団」(B+)を読了しました。→読書リスト
のび太は偶然北極で巨大なロボットの足を拾い、自宅に持ち帰った。それ以来、家の庭に次々と降ってくるロボットの部品を、ドラえもんと協力して鏡面世界で組み立ててザンダクロスと名づけ、しずかを呼んで遊んでいた。

ウィキペディアより引用
先日読んだ「藤子・F・不二雄_のび太と鉄人兵団」の小説版です。

科学的知識に基づいたSFホラー「パラサイト・イヴ」の作者がドラえもんの世界をどう料理するのかが非常に興味深いところでした。しかし結論から言ってしまうと原作漫画にほぼ忠実な小説化で大きな飛躍はなく、その期待は裏切られた格好になりました。まぁ、原作ファンは大きな改変は認めないでしょうから仕方ないところでしょうね。

漫画だとサクッと済む情景描写が文章でダラダラ書いてあるのは読んでいてまどろっこしいですし、ギャグも文章で説明されても白けてしまうし、小説化したことの弊害も目立ちます。科学的な解説が随所で試みられていますがドラえもんの世界を科学的に解説するのには無理も多く「その説明は長くなるから~」と確信犯的にごまかしてしまったりもしています。そんな中で「鏡の世界ではなぜ左右だけ反対になるのか」の解説はなんとなく納得出来ました。また、巨大ロボットの「頭脳」に関する描写には力が入っていて作者の本領発揮と言ったところです。2011年のリメイク映画では「頭脳」の描写を可愛い方に振っていますが、それとは逆に不気味な方に振っているのがホラー好きとしては評価できます(笑)

終盤にかけては登場人物たちの心理が細やかに描かれたり、巨大ロボット「ザンダクロス」に焦点が当たったり、原作にはないゲストキャラが微妙に絡んで来たり、小説版ならではの盛り上がりを見せます。特に現実世界で観測された異変に言及するあたりは上手く処理されていると思います。ただし、反則気味で安易なラストの問題解決手段はそのままです。ドラえもんの台詞でこの手段に対する疑問が提示されてはいますが、ここは物語の基本骨格なので変えられなかったんでしょうね。

「ドラえもん」にあまり思い入れの無い私にとっては少々物足りない気もしました。しかし原作ファンの評価は概ね高いようですのでドラえもんが大好きな方は一読の価値はあるではないでしょうか。

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蘇部健一_『六とん2』

「蘇部健一_六とん2」(A-)を読了しました。→読書リスト
Jリーグの試合中に殺された男はダイイングメッセージを残したのか?
~最後の事件
↑作者曰く「立ち読みの方は、いちばん最初のやつをどうぞ。買う気がなくなります。」
前に読んだアホバカミステリー「六枚のとんかつ」の第2弾です。ただし「六枚のとんかつ」の表題作には全く関係なく、単に営業上の戦略からこのタイトルにしたようです。この辺の舐めた真似も、らしくて良いですね~(笑)

しかし、タイトルに反して内容は必ずしも六とんのストレートな続編ではありません。全11編中六とんの続編のアホバカミステリーはグループAの3編のみです。グループB の4編は『動かぬ証拠シリーズ』、グループCの4編は『ノン・シリーズ』となっていてそれぞれ違う作風になっています。

【グループA】
・甘い罠
『敏腕保険調査員・小野由一は出張帰りに友人の家に寄った。その友人に警察から奥さんが殺されたと連絡が入る。』
トリックは正に名人芸! ネットで調べてみましたが実際その筋の名人のようです。これをミステリーのネタに使ってしまうという間違い方がある意味すごいです。

【グループB】
・行列のできるパン屋さん
『悪徳金融業者に人生を破壊されたベーカリー店主・笹倉は復讐を計画する。そのアリバイ工作にはパン屋らしいアイデアが…』
これはオチのところに出てくる可愛いイラストが最大のポイントです(笑)
グループBでは「読めない局面」の囲碁のトリックは良いと思いました。

【グループC】
・きみがくれたメロディ
『才能がないと宣告されたピアニスト兼作曲家・瀬能はレコード会社からの帰り際に一本のカセットテープを渡される。それは盲目の少女からのファンレターだったが…』
これはファンタジーテイストの良い話です。ちょっと涙ぐんだりして…
グループCでは「誓いのホームラン」も(たぶん)良い話でした。

「六枚のとんかつ」同様のアホバカトリック連発、脱力系の笑いを期待して読んだのですが見事に裏切られました。グループAの3編以外は全然六とんじゃありません。これで「六とん2」を名乗るとは詐欺じゃないでしょうか?でもグループBもCも結構面白かったので今回は許してあげましょう(笑)

収録作品
【グループA】
最後の事件
三色パンの秘密
甘い罠
【グループB】
午前一時のシンデレラ
行列のできるパン屋さん
姿なき目撃者
読めない局面
【グループC】
誓いのホームラン
地球最後の日?
叶わぬ想い
きみがくれたメロディ

表紙絵はこちら(Amazon.co.jp)

蘇部健一_『六枚のとんかつ』


「蘇部健一_六枚のとんかつ」(A-)を読了しました。→読書リスト

小野由一は敏腕保険調査員。彼の手にかかれば解けない謎はない。時には推理作家 古藤の助けを借りながら、時には無能な新入社員 早乙女(体重120kg)に邪魔をされながら日夜謎に挑むのであった。

本格ミステリーの名作「占星術殺人事件」のトリックを使用した作品とのことで気になっていました。裏表紙によると「空前絶後のアホバカ・トリックで話題」ということです。

確かにアホバカです。思わず脱力してしまうトリックが満載なのですが、中にはなかなか良いトリックがあったり、そのアホバカさ加減が爽快だったり、不快だったり(笑)全体的には楽しめる一冊でした。

・エースの誇り
高額切手の隠し場所の捜索に早乙女君が大活躍します。不真面目ではありますがトリック自体はなかなか面白いと思いました。

・しおかぜ17号49分の壁
トリック(というかネタ)は最初から明白なので謎解き要素は無いのですが本格時刻表ミステリー風の展開が緊迫感をもたらします(?)。これぞ正にアホバカ・トリック!関連する「最後のエピローグ」と合わせて大好きです。

・六枚のとんかつ
表題作の「六枚のとんかつ」は「占星術殺人事件」のトリックを使用した作品です。しかし、バラバラ死体は登場せず、雪山を舞台にしたアリバイ崩しミステリーに変貌しています。トリック流用は言われなければ気がつかないと思います。これは真面目なミステリーとしてもいい線行っているのでは?

続編が出ているので読もうと思います。どうせくだらないんだろうけど(笑)

収録作品
・音の気がかり
・桂男爵の舞踏会
・黄金
・エースの誇り
・見えない証拠
・しおかぜ17号四十九分の壁
・オナニー連盟
・丸ノ内線七十秒の壁
・欠けているもの
・鏡の向こう側
・消えた黒いドレスの女
・五枚のトンカツ
・六枚のトンカツ
・「ジョン・ディクスン・カーを読んだ男」を読んだ男
・最後のエピローグ
・保険調査員の長い一日

千石正一_『最後のゾウガメを探しに』

「千石正一_最後のゾウガメを探しに」を読了しました。→読書リスト
ガラパゴス、フロリダ、ニュージーランド、インド、マダガスカル、パラグァイ―。
それぞれの場所で出会ったヘビやトカゲ、サルなどの珍奇で希少な動物たち。
彼らの知られざる生態や豊かな自然を語る、地球への愛情あふれる紀行エッセイ。

裏表紙より
テレビ番組「どうぶつ奇想天外!」でおなじみの動物学者 千石正一氏がフィールドワークの様子を書き記します。

著者は学者であって物書きではないので文章はあまり読みやすくはありません。スキンク、アガマなどなど専門用語(いずれもトカゲの科の名称)も説明なしに登場し読者は置き去りにされることもあります。しかし、そんな学者バカっぽいところが却って動物たちへの熱い愛情が感じられ好感が持てます。大自然の中でのフィールドワークはなかなか過酷で、ヒルに悩まされたり、ヘビやトカゲを手づかみで捕まえたり、著者の容貌からはちょっと想像し難い野性的な面も垣間見えます。

いろいろな動物の面白い生態が紹介されていきますが、著者の専門である爬虫類が中心となります。私は昔からヘビがちょっと好きなのですが、ヘビには音が聞こえないというのは初めて知りました。ヘビ使いの笛でコブラが踊るのはコブラの動きに人が合わせているようです。その他、カメレオンの体色は別に保護色じゃない、世界最長のヘビの長さは10mで意外と短い、などなど意外な知識が披露されています。

フィールドワークの舞台になっているのはいずれも非常に豊かな自然が残されている地域なのですが、それでも大量絶滅は進行しています。著者もこの点を大いに嘆いています。この手の本を読むといつも思うのですが、動物としてのヒトの必要を大きく超える人間の様々な所業をそろそろ見直す必要がありそうです。

杉浦日向子_『百物語』

読書リストに「杉浦日向子_百物語」を追加しました。

古より百物語と吉う事の侍る不思議なる物語の百一話集う処 必ずばけもの現われ出ずると――人々が目に見えないものを見、理性では説明のつかぬことを信じていた江戸の時代。生と死の間で右往左往する人問たちの前に、時間を、空間を超えて現われる魑魅魍魎たち。怪しのものと人間たちの滑稽でいとおしい姿と懐かしき恐怖を、怪異譚集の形をかりて漫両で描いた〈あやかしの物語〉。

裏表紙より

短く特にオチがあるわけでもない話が99個並んでいます。いわゆる怪談のような本当に怖い話は少なく
怪異と共存する江戸の人々の様子を情緒たっぷりに描き出します。内容的には物の怪の話と人の情念
の話の2つに大別できるでしょうか。シンプルだが味のある絵も魅力です。
私は其ノ九十七「愛娘の霊の話」が気に入りました。切ない話です。

作者の杉浦日向子氏はNHK総合の「お江戸でござる」に出演されていました。和服の似合う日本的な
美人で彼女のコーナーを楽しみにしていたものです。作家の荒俣宏氏と結婚していた(半年で離婚)
というのはちょっとショックでした(笑)_もともと漫画を描かれていたのは知っていましたが、今回
たまたま目に留まったので手に取りました。46歳での夭折が惜しまれます。
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