上橋菜穂子_『獣の奏者 外伝 刹那』

「獣の奏者」の外伝という事で、エリンとイアルの馴れ初め、若き日のエサルを描いた中編を収録しています。
・「刹那」:過酷な運命を背負う子供を作るのをためらうイアルの苦悩が印象的です。エリンがそこを前向きにとらえるのが素敵です。 
・「秘め事」:エサルが若い時に意外とハッチャけていたのにびっくりしました。真実を追求する熱意はエリンと共通する部分も多く、エリンに寛容なのにはこういう背景があったのですね。
・「初めての」:ジェシ可愛いっ!エリンをおもいやって加減するところなんか最高です(笑)
     
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上橋菜穂子_『獣の奏者 Ⅳ 完結編』

全4巻の本編もいよいよラストです。最終的にエリンの積年の思いは遂げられるのですが、思いの外シビアな結末には正直驚きました。再現してしまう「災い」の様子は多分に「現代の寓話」に思えて、(現実の)昨今の情勢を鑑みるととても考えさせられます。児童書の括りで考えるとシビアすぎる気もしますが、これを教訓にして前進していくという希望を残しているのが絶妙なバランスだと思います。王獣は解放されたけど闘蛇の方がどうなったのか明記されていないのが爬虫類好きとしては気になったりして(笑)
     

上橋菜穂子_『獣の奏者 Ⅲ 探究編』

『王獣編から11年、エリンは獣ノ医術師としてかつて自分の村を襲ったような「牙」の大量死の調査に乗り出すが…』
国難に際してエリンが遂に王獣を武器とすることを承知するまでの話です。そこに王獣や闘蛇の生態、国際政治、エリン一家の絆、などが絡み合います。王獣や闘蛇にしてみれば「ヒトの都合に巻き込まれていい迷惑」という感じですね~(笑) 私には国の枠にとらわれないロランの考え方が一番賢いように思えます。守り人シリーズに比べるとファンタジー色が薄く、そのためか科学的設定がやや甘いように感じました。
     

上橋菜穂子_『獣の奏者 II 王獣編』

王獣を操る術を編み出して(再発見)しまったエリンが政争に巻き込まれる話です。王獣と闘蛇をめぐる過去のいきさつは現実の科学技術になぞらえて考えることもできますし、人間が動物を道具として使うことへの疑問も提示されたり、なかなか深い内容を含んでいます。ただ、導入となる前巻と比べると急いだ展開になっていることは否めません。単に無思慮な大人として描かれる悪役には魅力がなく、物語も全体的に中途半端な感じが… その辺は探究編、完結篇に期待しようと思います。
     

上橋菜穂子_『獣の奏者 Ⅰ 闘蛇編』

あの守り人シリーズの作者の人気シリーズなので期待していましたが、それを裏切らない面白さです。意外と重い導入部、聡すぎるのが玉に瑕(笑)の主人公エリン、彼女を支える周囲の人たち、まつりごとに関わる人々の思惑。。。などなどが絡み合って読み応え十分です。そしてなんといっても闘蛇や王獣など架空の生物に惹かれます。エリンが彼らの尊厳を守ろうとする態度には非常に共感を覚えます。この後の物語は竪琴がキーになりそうですね~ 
    

上橋菜穂子_『炎路を行く者』

「上橋菜穂子_炎路を行く者」(A-)を読了しました。→読書リスト

守り人シリーズで敵役タルシュ帝国の密偵でありながら不思議な存在感を持った人物ヒュウゴの出自を描いた中編と15歳のバルサの苦い経験を描いた短編が収録されています。国や性別こそ違えど苛烈な人生を歩む2人には共通点も多いようです。

【炎路の旅人】
圧倒的なタルシュ軍の前になすすべのないヨゴ皇国。武人の家族には容赦がないと言われるタルシュ軍から逃れるためヒュウゴらヨゴ皇国の近衛兵〈帝の盾〉の家族は分散して隠れ家に潜んでいた。

守り人シリーズ本編でのヒュウゴは母国を侵略したタルシュ帝国のために働き、それでいて侵略対象の新ヨゴ皇国の王子チャグムにも同情的である、という不思議な立ち位置の人物です。その行動の動機は本編では曖昧だったのですが、この物語でその背景に納得がいきました。国家の中枢に近いところで幼少期を過ごし、その後過酷な境遇に陥るという点はバルサやチャグムにも共通しています。ただでさえ多感な時期にこれだけの経験をすれば人間として強くなりますよね~ そして、文字通りの意味でヒュウゴの強い事と言ったら。まぁ、本格的な実戦武道を幼いころから仕込まれているので町のチンピラ相手なら当然とも言えますが。。。 ぜひ最強の短槍使いであるバルサと一手交えて欲しいところです(笑) ヒュウゴとバルサって直接の面識はないんでしたっけ?

【十五の我には】
ジグロとバルサは仲間の護衛士の裏切りで隊商の護衛に失敗した。傷の療養を兼ねて街の酒場で下働きをしていたバルサは客の中に裏切った護衛士を見つける。

こちらはバルサ15歳、若気の至りを描いた作品です。若いうちは経験不足から失敗をしますが、それで成長するものですから仕方ないとも言えますね~ 私自身を振り返ると。。。確実に「ずるく」はなっているけどはたして成長したといえるかどうか。。。(^_^;)

表紙絵はこちら(Amazon.co.jp)

上橋菜穂子_『流れ行く者』

「上橋菜穂子_流れ行く者」(A-)を読了しました。→読書リスト

「守り人」シリーズの主人公バルサの少女時代を描く短編集です。バルサは本編登場時には一流の用心棒となっていて、優しさを隠し持ってはいるのですが非情とも言える冷静さを前面に出していました。この外伝で描かれる少女時代には外面的な甘さもあってその辺が可愛いところです(笑)

割合穏やかな展開で(アクションシーンもありますが)、外伝らしい外伝だと思います。
守り人シリーズには他にも個性的なキャラクターが多いのでその外伝も読みたいものですね~

・「浮き籾」
少年時代のタンダの住む村が舞台。山犬が出没し村人が何人も襲われた。
行き倒れとなった風来坊のオンザの祟りだと噂されるが…

少年時代のタンダの様子やバルサとの関わりが描かれます。まだ子供の11歳のタンダと少女時代に差し掛かった13歳のバルサの関係が微笑ましいです。バルサがジグロのことを「父ちゃん」と呼ぶのがちょっと新鮮でした。

・「ラフラ」
バルサたちが住み込みで働く酒場に雇われている賭事師(ラフラ)のアズノは氏族長の重臣とのススット勝負にバルサを同行する。

架空のゲーム「ススット」は昔流行ったウォーゲームみたいなイメージなんでしょうか?
誰か商品化してほしい(笑)

・「流れ行く者」
バルサたちはトロガイの家に向かうため護衛士として隊商と同行する。
年老いた護衛士仲間のスマルは商人頭のトキアンに「これが最後」と引導を渡される。

バルサの護衛士デビューのエピソードですね。バルサは13歳にして18,9の男の護衛士をやっつけてしまい後々の強さの片鱗を見せています。

・「寒のふるまい」
バルサたちの帰りを心待ちにするタンダ。そこに現れる2つの人影。

短いエピローグです。この後にジグロが…ってことでしょうか?

表紙絵はこちら(Amazon.co.jp)

上橋菜穂子_『天と地の守り人』

「上橋菜穂子_天と地の守り人」(A)を読了しました。→読書リスト
タンダとトロガイはナユグの異変がサグに影響を及ぼすのを心配していた。バルサは用心棒の仕事の途中でジンの使いから手紙を受け取る。死んだとされているチャグムは実は生きていて見つけ出して護ってほしい、と言うのだ。
2年半ほど前から読んでいた守り人シリーズもいよいよ最終巻になりました。この「天と地の守り人」は全3巻にもなるボリュームで壮大な物語を締めくくってくれました。

物語は強大な力を持つタルシュ帝国の侵略に新ヨゴ皇国、カンバル王国、ロタ王国ら北の大陸の諸国がどう対抗するか、という国際状況。ナユグに春が来るということでサグにも異変がおきるという自然環境。その中で流浪の皇太子のチャグム、女用心棒のバルサ、呪術師見習いのタンダ、たちの運命はいかに?、ということになっています。

第一部の最後にはチャグムとバルサがついに出会い、これで一安心と胸をなでおろしました。シリーズを通して読んでいると交互に出てくるので気が付きませんでしたが、この二人が直接会うのはかなり久しぶりで『夢の守り人』以来のようです。まぁ、チャグムがまさに危機一髪ってところでバルサが間に合うっていうのはちょっと出来すぎの気はしましたが… バルサが強いのは相変わらずですが今回は良く怪我をします。その描写はいかにも痛そうで想像すると顔をしかめるほどです。しかし、その都度後遺症もなく復活するバルサはもしかしたら不死身なのかも(笑)

第二部でカンバルを味方につけてタルシュに対抗する目途がつき、第三部ではいよいよタルシュ帝国と連合軍の決戦となります。タルシュ軍が撃退される場面は時節柄心に突き刺さるものがありました。また、主要な登場人物であるタンダは無力な一兵士として存在します。実際の戦争では私たちはこういう立場に立たされるわけで、改めて戦争の凄惨さを実感しました。バルサは国を背負う立場になったチャグムとは対照的にタンダを第一に思うことによって昔の呪縛から逃れられたようです。

物語は一応の決着を迎えましたが、この世界は色々と予断を許さない状況です。ナユグに春が来たことによりロタやカンバルが豊かになるというプラス要素もあるので意外と明るい感じもしますが… このあとどうなるのかとても気になります。できれば続編が読みたいな~

児童書とは言え複雑で深い物語で大変楽しめました。一読だけでは堪能しきったとは思えないので少し時間をおいたら再読したいと思います。

表紙絵はこちら(Amazon.co.jp)

上橋菜穂子_『蒼路の旅人』

「上橋菜穂子_蒼路の旅人」(A)を読了しました。→読書リスト
サンガル王国から新ヨゴ皇国に援軍の要請が来る。タルシュ帝国の侵略に苦戦しているというのだ。帝はチャグムを後援するトーサ将軍を指揮官に艦隊を派遣する。この要請が罠だと気付いたチャグムは帝に進言するが、その結果チャグム自身が艦隊に同行することになった。
冒頭からタルシュ帝国の密偵の暗躍が描かれまるでスパイアクション映画のようなハラハラ感です。前巻「神の守り人」ではホラー調、今回はスパイアクション調と、つかみはOKってとこでしょうか?(笑)

今まで「南の大陸からの脅威」と記号的な記述しかなかったタルシュ帝国が本格的に描かれます。なんかSF的な侵略者のイメージ(ガミラス帝国のような)だったのですが、人が作る国だからタルシュ帝国内にも当然それなりのドラマがあるはずですよね。このタルシュ帝国の文化的、軍事的強大さには驚きです。なぜこんな国力を持つことができるのか、その辺が興味深い点です。なんかファンタジー的な仕掛けがあるんでしょうか、それとも単に大国の象徴なんでしょうか。

それにしても帝のチャグムに対する仕打ちはあんまりです。精霊の守り人になったり、下賤の生活の経験があったりするチャグムに対して異物感や脅威を感じているということでしょうか? ここまではやはり記号的な存在の帝ですが最終巻ではその辺も描写されるのでしょうか? チャグム自身は国力的にも年齢的にも格上のタルシュ帝国の王子と対等にやりあうなどなかなかの大物ぶりを発揮しています。

これまでの巻はそれだけで一つのまとまった話になっていたのですが今回はとてもいいところで終わっています。登場人物欄にバルサ、トロガイ、タンダなどが出ているのに結局出てきませんでした。単身のチャグムに偶然出会うって展開になるのでしょうかね~? 最後の「天と地の守り人」もあまり間を開けずに読もうと思います。

表紙絵はこちら(Amazon.co.jp)

上橋菜穂子_『神の守り人』

「上橋菜穂子_神の守り人」(A)を読了しました。→読書リスト
新ヨゴ皇国の東に位置するロタ王国、国境近くのシンタダン牢城で謎の大虐殺が起きる。処刑された女を中心にして看守も囚人も喉やうなじをまるで狼に噛み裂かれたような傷を負い死んでいたのだ…

バルサはタンダに付き合ってヨゴの草市に来ていた。その宿で年若い兄妹(チキサとアスラ)の人身売買の現場に踏み込んだバルサは何か得体のしれないものに襲われる。
いきなり謎の大量殺戮というホラーな現象からスタートします。ホラー好きの私としてはこれだけでググッと引き込まれました。私はハードカバーで読んだのですが二木真希子氏の挿絵もなかなか雰囲気があって良いですね~ 来訪編P183のタルハマヤや帰還編表紙のアスラなんかは怖くて好きです(笑)

前作「虚空の旅人」ではお休みだったバルサが再登場ですが相変わらず強い! しばしば見せる生き延びるための非情さと、周囲の人や弱いものを気づかう優しさとが対照的です。基本的には良識ある大人という立場ですが、その中に「戦いを求め楽しむ」という危うさを持っているのも大きな魅力です。

兄妹の妹アスラに宿ったおそろしき神〈タルハマヤ〉を巡り、アスラを守ろうとするバルサたち、タルハマヤの力を利用しようとするもの、タルハマヤを恐れるもの、のやりとりが物語になっていきます。舞台となるロタ王国の成立過程や現在の国内情勢はなかなか複雑で実在感のあるものになっています。特に地域間格差の問題なんかは切実ですね~ そしてここにも「虚空の旅人」に続きタルシュ帝国の影が…

迫力ある描写が続くクライマックスはさすがです、そしてちょっと切ない結末。
それにしても目を覚まさないアスラのことは気になりますね~

表紙絵はこちら(Amazon.co.jp)

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