谷甲州_『終わりなき索敵』

「谷甲州_終わりなき索敵」(A)を読了しました。
第一次惑星動乱から11年後、太陽系に向かって急接近する物体が発見される。「SG」と呼ばれるその物体を観測するために「観測艦ユリシーズ」が派遣される。ユリシーズには員数外の10番目のクルー「作業体K」も搭乗していた。
昨年のベストにあげた「地球移動作戦」に似たような出だしですが全く違う展開となります。「最後の戦闘航海」でちょっとだけ出てきた作業体Kが出てきますが、どういう経緯でユリシーズに乗ることになったのかは判然としません。

SGに接近したユリシーズに事故が発生しその危機に作業体Kが身を挺して。。。というのはありそうなパターンなのですが、ここからちょっと普通じゃない話になっていきます。この航空宇宙軍史シリーズは物理学に則った嘘っぽくない宇宙戦争が売りなんですが、そんななかで度々、恒星間航行やそれを支える超光速移動、宇宙の広範囲に繁栄する汎銀河人、などなど、嘘っぽい(?)話が出てきます。その辺が私には少々納得のいかないところだったのですが、ここでその説明を試みています。

超光速移動を可能にする宇宙における潮流のような「空間流」なるものが登場します。相対性理論によると時間と空間は等価なので超光速移動をすると時間旅行することになり。。。時間をさかのぼった作業体Kは過去に干渉することになり。。。様々な因果関係が崩壊し。。。作業体Kは様々な人格に変貌し。。。創造神となって宇宙に人類の種子を撒き。。。etcetc.と かなりブッ飛んだ話になっていきます。

そんなこんなで恒星間航行の技術を手に入れた人類(航空宇宙軍)は地球外人類(汎銀河人)と接触しそれを支配しようとします。汎銀河人の文明は地球の20世紀前半程度のものなので科学力では航空宇宙軍と比ぶべくもありませんが決死の攻撃で一矢報います。この軌道上の宇宙船をプロペラ機で攻撃するところの描写がかなり面白く読めました。なんとなくジブリアニメっぽいイメージです。

その後はいつの間にか科学技術を飛躍的に向上させた汎銀河人と航空宇宙軍との決戦になるのですが、この辺は正直よくわかりません。勝負は一瞬でついてしまいヤマトやガンダムのような華々しい戦闘シーンは皆無です。この過程で明かされるこの物語の発端であるSGの正体には驚きました。そして勝者の戦後の選択には納得しました。しかし超光速技術が存在する限りものごとの因果関係は意味をなさないので。。。とは思いますが(笑)

端々にシリーズの登場人物も(ほぼ名前だけすが)出てきて締めくくりにふさわしい作品です。同時に実験的なトンデモSFでもあり単体としても楽しめました。もっとも2012年年間ベストの「星の墓標」がシリーズ中で一番というのは揺るぎませんが。。。

これで「航空宇宙軍史」シリーズを読み終わることになってしまってちょっと残念です。
が、一読だけではよくわからない部分も多いので再読しても良さそうです。
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谷甲州_『最後の戦闘航海』

「谷甲州_最後の戦闘航海」(A-)を読了しました。→読書リスト
外惑星連合軍と航空宇宙軍の壮絶な闘いが終結した。外惑星連合軍にとって、はじめから勝算の見込みの薄い闘いではあったが、やはり兵士たちにとって敗れたショックは大きかった。戦後処理のため敵軍が敷設した宇宙機雷処分の命を受けたガニメデ宇宙軍所属の掃海艇CCR‐42の艇長・田沢も例にもれなかった。その田沢に対して、厳重に機雷封鎖された木星の小衛星に設置された研究所のデータ回収が言い渡されたが…。 

裏表紙より
占領軍の命令で戦後処理の一環として機雷処理する掃海艇が主役とはまた地味なテーマを選んだものです。掃海艇が主役なんて普通の戦記ものでも聞いたことありませんよ(笑) とは言え、掃海は地味ながらも重要な任務で、ちょうど出版されたころ(1991年)には海上自衛隊が湾岸戦争の戦後処理でクェート沖で掃海任務にあたっていたそうです。

掃海艇が主役なので戦闘と言っても相手は機雷です。ところがこの機雷が意外と手強く掃海艇の裏をかいてきたりします。まるで無人戦闘ロボットのようですが、現在の現実の(海の)機雷でも「インテリジェント機雷」「スマート機雷」と呼ばれるものもあるそうなんで決して非現実的でもないようです。

全5話で構成される連作短編の体裁なのですが第3話は掃海艇とは直接関係ない話です。外惑星連合軍の仮装巡洋艦の元艦長が戦犯の容疑から逃れるために潜伏するというスパイものの展開です。外惑星連合軍の残党の内輪もめが描かれます。掃海艇の目的地の研究所とも関係があるようですがいまいちはっきりしません。おそらく続編の「終わりなき索敵」に続くものと思われます。

掃海艇の方はいろいろあった末になんとか目的の小衛星に到着します。そこで「作業体K」なるサイボーグ(?)と接触したところで話は終わっています。ここもやはり続編に続くということのようです。作業体Kについては研究員の手記という形で描写されてはいますが、直接はまだ登場していません。なんかちょっとおぞましい形態をしているようなのでイラストが欲しいところです。

去年の1月ごろから読み始めた航空宇宙軍シリーズですがいよいよ次の「終わりなき索敵」が最終となります。楽しみというか読み終わってしまうのが寂しいというのか、ちょっと複雑な心境です。「終わりなき索敵」は図書館にないので早々にAmazonに注文しました。マーケットプレイスの中古品ですが上下巻で15円(笑)、送料が別に500円かかりますが。。。

表紙絵はこちら(Amazon.co.jp)

谷甲州_『巡洋艦サラマンダー』

「谷甲州_巡洋艦サラマンダー」(A-)を読了しました。→読書リスト
外惑星連合軍が劣勢を挽回するために投入した唯一の正規巡洋艦サラマンダー。しかし急造艦の宿命か、エンジンは不調を訴え応急修理を必要としていた…。

巡洋艦サラマンダー(裏表紙より)
谷甲州氏の航空宇宙軍史シリーズの一冊です。4中編が収録されています。

・巡洋艦サラマンダー
「火星鉄道一九」収録の「土砂降り戦隊」に出てくる外惑星連合軍唯一の正規巡洋艦サラマンダーのその後を描きます。大戦果をあげたサラマンダーが圧倒的な戦力の航空宇宙軍から逃れることができるのかが焦点です。未完成のまま出航したサラマンダーには造船技師が乗っていて工事を続けながら作戦を行っています。史実では第二次大戦中の日本の空母信濃は同様の状態で最期を迎えました。

・サラマンダー追跡
サラマンダー追跡戦を航空宇宙軍の立場から描きます。「土砂降り戦隊」のレニー・ルークも出てきて懐かしいのですが旗艦に入る連絡という形だけなのでちょっと寂しい感じです。でもこの渋さがこのシリーズの良いところなのかもしれません(笑) サラマンダーの運命は第二次大戦中のドイツのポケット戦艦グラフシュペーになぞらえたもので昔見た映画「戦艦シュペー号の最後」を思い出しました。

・アナンケ迎撃作戦
外惑星動乱最後の段階、圧倒的な戦力で押し寄せる航空宇宙軍に対して対応に苦慮する外惑星連合軍の様子を描きます。本来艦船上にあるべき艦隊司令部が陸揚げされていたりするのはまるで第二次大戦末期の日本海軍のようです。物量だけではなく戦術、戦略、そして組織面でも後れを取り崩壊する様は負ける軍隊の定番のようです。

・最終兵器ネメシス
木星の衛星イオで行われていた火山を利用した開発中の最終兵器を巡る外惑星連合軍の内輪もめの話です。ついさっきまで友軍だったものが結果的に命のやり取りをする羽目になってしまう様が非情です。最終兵器ネメシスはなかなかトンデモです。ガミラスの遊星爆弾をこのシリーズ流に登場させたって感じでしょうか?

地味地味地味っ! ハードSF描写優先で物語二の次という感じです。まぁ、こちらが求めているのもそっち方面なんで文句はないんですが(笑) 史実などからのエピソードの流用がありますが元ネタを知らないと意味がないですしね~ 去年のベストにあげた「星の墓標」があまりにも絶妙なバランスだったんでついつい期待過剰になってしまうというのもあるかもしれません。4編の中編という構成なので一話一話は短めでその点では長編よりは救いがあります。

表紙絵はこちら(Amazon.co.jp)

谷甲州_『タナトス戦闘団』

「谷甲州_タナトス戦闘団」(B+)を読了しました。→読書リスト
カリスト防衛軍陸戦隊のダンテ隊長は月のセントジョージ市に潜入していた。外惑星連合軍の航空宇宙軍艦隊への奇襲攻撃と同時に陸戦隊も後方破壊を行なう。その目標がここにある月面最大の工場群だった。ダンテは気がすすまないながらもこの無謀な作戦準備のため、自ら情報収集を買ってでたのだ。

裏表紙より
勇ましいタイトルからタナトス戦闘団の活躍を描く戦記ものというイメージを抱いていたのですが実際にはスパイものでした。戦闘シーンもあるのですが284ページ中の230ページ以降でしかなく物足らなさが残ります。せめて半分くらいは作戦の描写が欲しかったところです。

ダンテ、ランス、ロッドなどお馴染みのタナトス戦闘団の面々が敵地に潜入します。戦闘員としては一流の彼らですがスパイとしてはずぶの素人です。敵に翻弄され現地の味方の協力は得られずほとんど良いところがありません。現地のエージェントであるインド系のシャンティ、日系の緒方優らの尽力で作戦自体は一応成功しますが。。。

国家間の戦争を題材にしているのに個人の事情にスポットが当たる場面が多くてちょっと違和感がありました。せっかく月面が舞台なのにその設定を活かしたSF的描写も少なくて。。。 シリーズ通してのキャラクターであるタナトス戦闘団の面々の魅力に頼りすぎている感じで、タイトルから過度の期待をした私にはこの巻はちょっと肩すかしでした(^_^;) 

表紙絵はこちら(文庫シェルフ)

谷甲州_『エリヌス 戒厳令』

「谷甲州_エリヌス 戒厳令」(A)を読了しました。→読書リスト
外惑星動乱終了から20年。外惑星軍の残党であるSPAはいまだに各地で地下活動を続けていた。天王星の衛星エリヌスではロペス保安部長の指揮下、予測されるクーデターへの防衛体制がとられていた。一方、航空宇宙軍フリゲート艦アクエリアスは休暇を返上して緊急出港した。その任務はSPAのものと目される正体不明船の追跡、拿捕であった。
天王星の架空の衛星エリヌスで起こるSPAによるクーデターが主題です。このエリヌスという衛星は執筆当時(1983年出版)に衛星が存在してもおかしくない位置を想定したもので、実際1985年にボイジャー2号によりほぼ同一位置に衛星が発見されたとのことです。

外惑星動乱から20年後ということで動乱時に新鋭艦として就航したフリゲート艦アクエリアスが大改装をされていまだに現役として活躍しています。衛星でのクーデターが主題なのでこの巻で描かれる本格的な宇宙戦は1回だけですし、正規軍対ゲリラということで戦力差は歴然としていますが、太陽近傍での戦いはなかなか緊迫感があります。

クールでタフな女戦士はこの手の話では付きものなんですがここで登場するSPAの女戦士ジャムナは唯一の女性キャラクターとして光ります。いきなり仲間が全滅し囚われの身になりながら見事に一矢報いる姿は実に爽快です。

エリヌス上での保安側とクーデター側の攻防も読みどころです。保安側のロペス部長がクーデター勢力だけではなく予算や、人員確保、市長との交渉など実務上の障害にも悩まされる点はリアルです。クーデター側も急進派と穏健派の対立や、それに伴う粛清など多くの問題を抱えています。

エリヌスの直径は350kmしかないので重力は非常に小さくなります。そのためアクションシーンはちょっと特殊です。うかつに飛び上がってしまうと降りてこられなくて手足をバタバタしてしまうシーンはちょっと笑えます。

物語は終盤になってクーデターの真の目的と意外な黒幕が明かされます。その目的自体はちょっとぶっ飛んでいてシリーズをここまで読み進めた私にとっても???な内容です(^_^;) 女戦士ジャムナ、ロペス部長、サイボーグのオグなど魅力的なキャラクターが多々登場しますが終盤であっさり死んでしまいます。歴史の中では人の命は軽い物なのでこれもリアルと言えばリアルであるとも言えます。まぁ、私はフリゲート艦アクエリアスのクルーが無事だったんで特に問題はないんですが(笑)

表紙絵はこちら(Amazon.co.jp)

谷甲州_『カリスト―開戦前夜―』

「谷甲州_カリスト―開戦前夜―」(A-)を読了しました。→読書リスト
木星の衛星カリスト、ガニメデ、土星の衛星タイタンを中心とする外惑星連合は独自の軍事力を蓄え地球の支配から脱却しようと画策していた。その動きを封じようと航空宇宙軍は新鋭フリゲート艦による査察を通告してきた。
この前に読んだ「星の墓標」はかなりSFっぽかったのですがこれはスパイスリラー的な展開で超科学的な内容は含まれていません。経済的、軍事的にある程度の独立性を持ってきた外惑星側と地球側の思惑が交差します。力を持ってきた植民地が本国の支配から独立しようとする動きは実際の歴史の再現そのままに思えます。

このシリーズ全体の背景となる外惑星動乱の勃発の過程が描かれ、カリスト軍内部での開戦派と非戦派のやりとり、「星の墓標」で出てきたタナトス戦闘団の設立や訓練の様子、が並行して語られます。

戦争という大きな流れの中での一兵士や兵器にスポットに当てて来たこのシリーズ全体に対して世界観を説明をするような内容で、言ってみれば非常に地味です。まぁ、タナトス戦闘団のメンバーは個性派ぞろいですし、低重力下での戦闘シーンはそれなりに面白いので、その辺は一応カバーされているとも言えますが…

少々納得しがたいのは外惑星側が独立を画すほどの経済力を持ちうるようになった理由や過程が描かれていないことです。地球外で人間が活動するのは余りにも条件が厳しすぎて人口、資源、生産力などあらゆる点でどうしても無理があるような気がするんですが… この辺の歴史も続く巻でちゃんと語られているのでしょうか?

表紙絵はこちら( 文庫シェルフ)

谷甲州_『星の墓標』

「谷甲州_星の墓標」(A+)を読了しました。→読書リスト
・第一話 タナトス戦闘団
外惑星動乱末期。ダンテ中佐率いる外惑星軍タナトス戦闘団はタイタン(土星の衛星)の研究施設を急襲する。目的は研究成果の回収だ。その極秘研究とは…
・第二話 ジョーイ・オルカ
外惑星動乱以前。地球(たぶん日本)の海獣訓練センター。ジョーイら訓練中のシャチは何者かに襲われる。仲間のシャチ8頭が連れ去られ、ジョーイも負傷する。
・第三話 トランパー・キリノ
外惑星動乱後40年。小惑星セレスを拠点にするトランパー(一匹狼の船主兼航宙士)キリノは不況にあえいでいた。サルベージ屋のオロイが儲け話をつかんだと踏んだキリノは横取りしようと画策する。
・第四話 星と海とサバンナ
第三話の続き。オロイはサルベージ対象の漂流船に接近していた。漂流船の近くで宇宙空間を漂う死体を発見する。それは一年ほど前から行方不明になっていた同業者だった。
全体としては「仮装巡洋艦バシリスク」収録の「砲戦距離12,000」に登場する無人攻撃宇宙船ヴァルキリーに関連する話です。私が不自然に感じたヴァルキリーのコンピュータの賢さの謎に回答する内容になっています。まぁ、その答えはなかなかおぞましいのですが…

ヴァルキリーの他にラザルス、オルカ戦隊、オルカキラー、などの無人戦闘システムが登場します。これらはあるつながりを持っているんですが、この辺の設定がミステリアスで絶妙です。この中で思い入れてしまうのはやはりオルカキラーことシャチのジョーイ君です。一人称が「ぼく」なのは可愛いのですが、なんといっても野生の獰猛さを併せ持つというところが魅力です。

シャチが人間のような思考をしたり、テレパシーのような超能力的描写が出てきたりするのでそれほどガチガチのハードSFではありません。この点は「火星鉄道一九」を読んだ時点の印象とは違うのですが、却ってセンスオブワンダーが拡がる話になっています。とは言えベースは戦争ものなのでこの作風でここまで惹きつけられるのには読む方の趣味が一致しないと、とは思います。

読んでいる最中はてっきり4編の中編集だと思っていたのですがまとまって長編になっていました。いや、本のタイトルの中編が含まれていないんでおかしいとは思っていたんですよ(笑) まぁ、登場人物、場所、時代などがバラバラなので一見一つの長編とはわかりにくい構造ではあります。

ここまでシリーズを読んできましたがここに来て面白さ炸裂です。思い切って評価A+(6年ぶり)を付けてみました。難としてはこれ以前の作品に貼られた伏線を回収する体になっているのでシリーズを出版順に読む必要があることでしょうか。

表紙絵はこちら(Amazon.co.jp)

谷甲州_『仮装巡洋艦バシリスク』

「谷甲州_仮装巡洋艦バシリスク」(A)を読了しました。→読書リスト
第一次外惑星動乱終結から150年。航空宇宙軍外宇宙艦隊シリウス方面隊所属の哨戒艇が、幽霊船のごとく大宇宙に漂う一隻の宇宙船と遭遇した。

仮装巡洋艦バシリスク(裏表紙より)
谷甲州氏の航空宇宙軍史シリーズの一冊です。4中編が収録されています。

・星空のフロンティア
いきなり地球上のインドで始まります。主人公は母の消息を訪ねる軍人ということで、この世界にも女性がいるんだと一安心しました(笑) 母の消息はつかめぬままに宇宙勤務につくのであれは何かと思っていたら「あぁ、そう来たか」という結末。未来の宇宙開発や宇宙論、相対性理論に絡めた話でした。

・砲戦距離12,000
これは戦争もの。正体不明の無人攻撃宇宙船ヴァルキリーと輸送船団の護衛艦の戦いを描いています。昔の戦艦の砲術になぞらえた超遠距離攻撃の描写はプチ軍事ヲタ心をくすぐります。しかしコンピュータが操縦する無人宇宙船がここまで賢いと他の宇宙船に人が乗っている意味がわからない感じもします。

・襲撃艦ヴァルキリー
「砲戦距離12,000」のヴァルキリーの後継機と再び遭遇する護衛艦の元乗組員の話。時代は少し後なので下っ端だった乗組員が艦長に出世しています。ここでもコンピュータの賢さが目立ちます。

・仮装巡洋艦バシリスク
タイトルから仮装巡洋艦による宇宙での通商破壊活動を描く軍記だと思っていたのですが全く違いました。漂流する150年前の仮装巡洋艦を発見する話です。これも「星空のフロンティア」同様、宇宙論、相対性理論に絡めた話です。幽霊船伝説の宇宙バージョンと言ったところでしょうか?

全体を通して宇宙を舞台にした軍記ものと想像していたのですがもっとSF色の強いものでした。確認はできませんがたぶん理論的な裏付けのある話なんでしょう。予想していたものとは少々違いますが十分面白いのでシリーズは引き続き読むつもりです。

以前書いた通りこのシリーズはうちの図書館にはあまり置いていません。この本については古本屋をはしごしてもなく(そもそも谷甲州の本自体がない)結局Amazonの中古で本体1円(送料250円)で購入しました。1円とはいえ少々の経年変化があるだけで読むのには全く支障ありませんでした。余計な心配ですがこれで儲かるんでしょうか?(笑)

表紙絵はこちら(ビーケーワン)

谷甲州_惑星CB-8越冬隊

「谷甲州_惑星CB-8越冬隊」(A-)を読了しました。→読書リスト
汎銀河人バルバティは、惑星CB-8の氷と雪に閉ざされた大陸の踏査を行っていた。汎銀河当局は、バルバティら越冬隊を送り込み、不毛な永久凍土を人工太陽によって沃野に変える大計画を推進しようとしていたのだ。だが…

裏表紙より
先日読んだ「火星鉄道一九」を含む航空宇宙軍史シリーズに先立つ形で発表された外史と言っていい作品です。本編の航空宇宙軍史の遥か未来の話だそうで、航空宇宙軍史とタイトルもされていません。舞台は惑星CB-8上に限られ、太陽系内の宇宙戦争を描いた「火星鉄道一九」とは全く異なる氷の惑星での冒険ものです。

舞台はどこかの恒星を巡る惑星CB-8です。しかし、どこかの恒星を巡る惑星を舞台にするためには恒星間航行が完成していなければならないはずです。航空宇宙軍史の特徴である「嘘っぽくない」を考えると恒星間航行の実現はかなりハードルが高い感じですが、それについては本書では全く記述がありません。

登場人物には汎銀河人と地球人がいます。それぞれの歴史認識は違うようですが、もし汎銀河人が地球人と出自が違う生物だとすると両者は交配も可能なようですからあまりにも都合が良すぎます。これには登場人物のセリフで両者とももともとは地球人だったと示唆されてはいます。

恒星間航行を実現する科学力を持つ文明にしては登場メカがあまりにも普通です。汎銀河人の使うスノー・クルーザーはホバークラフトっぽいのでまだしも、地球人の雪上車はキャタピラですし、表紙を飾るスノー・バイクは丸っきりスノー・モービルです。エンジンの原理もスターリングエンジンなど現用されているものも出てきたりします。

このように航空宇宙軍史の一冊だと思うと突っ込みどころも多いのですがその辺に目をつぶれば冒険ものとしてはなかなか良く出来ています。

人物造形はリアルです。主人公バルバティは有能な技術者ですが他の登場人物も同じように有能です。バルバティの上司のツラギは経験豊富で多くの点でバルバティに勝っていますし、現地に詳しい地球人たちはさらに有能です。アニメなどによくありがちな主人公偏重な展開が極力抑えられているのには好感が持てます。もっとも、ありがちな「嫌な上司」ってのも登場しますが(笑)

過酷な自然条件下での冒険が主題になります。地球上の厳寒地での行動もかなり大変だと思うのですが惑星CB-8ではその特異な条件(公転軌道、自転軸の傾き)の上に人工太陽の暴走とさらに過酷になってきています。しかし温暖な地域に暮らす私にはSF的な要因での過酷さと厳寒地の過酷の違いがあまり実感できません。これだと舞台が地球上の厳寒地でも大差ないような感じでせっかくのSF設定がもったいない気がしました。

登場人物は「火星鉄道一九」同様全部男で全く色気がありません。「故郷に残した妻子のことを思う」というような描写も一切なくハードボイルドに徹しています。航空宇宙軍史には女性はこの先も一切出てこないのかもしれません(笑)

表紙絵はこちら(古書ホップ)

谷甲州_『火星鉄道一九』

「谷甲州_火星鉄道一九」(A)を読了しました。→読書リスト
特設砲艦レニー・ルークはエンジン不調の輸送船G-19を護衛するために主力艦隊から遅れて航行していた。乗員は自分たちの不運を呪っていたが…

土砂降り戦隊
「嘘っぽくない宇宙戦争が魅力である」谷甲州氏の航空宇宙軍史シリーズの一冊です。toll_npcさんがこのシリーズの「巡洋艦サラマンダー」を紹介されていて面白そうなので読んでみることにしました。出版順に読むのが理想なのですがうちの図書館には全巻は揃っていないので、あるうちで最初に出版された「火星鉄道一九」からにしました。この「火星鉄道一九」は航空宇宙軍と外惑星連合の戦争を描く連作短編集です。各編とも政府軍的な立場の航空宇宙軍の視点で描かれています。

toll_npcさんもおっしゃっていますが、と~っても地味なSFです。近未来の宇宙戦争を描いているのですが、宇宙人は出てこない、舞台は太陽系内、ロボットも出てこない、主用兵器は機雷、などなど現実的な描写に徹しています。

現実的ということになると電子機器を駆使したボタン押し戦争とイメージされますがそこが一味違います。舞台は太陽系内とはいえ広大な宇宙なので戦闘距離はとても大きくなります。そのため電波や光を使用する通信や索敵が即時性を持ちませんし信頼性も欠きます。そのため意外と人間頼りのアナログな戦闘となります。そしてニュートン力学に基づいた宇宙船や機雷の運動、燃料の使用などなど科学的な制約があります。作者があとがきで述べていますが、これはちゃんと計算されたものなので説得力があります。もっとも私にはそれを検証する知識はありませんが(笑)

話は純粋に戦闘の帰結に絞られています。この巻では女性は出て来ませんし、登場人物は全員職業軍人です。とは言え軍人も人の子、それぞれの思惑は十分に描かれ決して記号として登場するだけではありません。ちょっとした描写からその性格や考え方をリアルに表します。

これは面白いので是非とも全巻を出版順に読みたくなりました。図書館にある分は図書館で借りるとして、古本屋、ネットショップなどなど漁って読むことにします。

収録作品
・火星鉄道一九
・ドン亀野郎ども
・水星遊撃隊
・タイタン航空隊
・小惑星急行
・土砂降り戦隊
・ソクラテスの孤独

表紙絵はこちら(Amazon.co.jp)

【航空宇宙軍 一覧 ハヤカワ文庫】
*「惑星CB-8越冬隊」
「仮装巡洋艦バシリスク」
「星の墓標」
「カリスト-開戦前夜-」
*「火星鉄道一九」
*「エリヌス-戒厳令-」
*「タナトス戦闘団」
*「巡洋艦サラマンダー」
*「最後の戦闘航海」
「終わりなき索敵(上下巻)」
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