山田風太郎_『室町少年倶楽部』

「山田風太郎_室町少年倶楽部」を読了しました。→読書リスト

16歳にして室町幕府の管領の細川勝元は10歳の未来の将軍 三春丸(後の足利義政)を京都市中に連れ出し
「町人や百姓の暮らしを楽にしてやりたい」とその胸中を語る。それに答え三春丸もいい将軍になると誓う。
美しい侍女お今、勇猛な好漢山名宗全が彼らを優しく見守る。彼らの未来は明るいように思えるが…

タイトルや上に記した出だしを見ると、勝元が三春丸を助け苦労しながら町人や百姓のための政治に
邁進する爽やかな物語、を想像したりします。しかし、そこは風太郎です。

私は歴史には疎いのでこの本を読むまでは殆ど知らなかったのですが(日本史の授業中は良く寝てたし)
義政は文化面の功績はあるものの室町幕府衰退の主犯格ですし、勝元と宗全は応仁の乱で争う間柄、お今は
義政のそばに蔓延る奸臣と呼ばれるようになる、と碌なもんじゃないのです(^_^;)

基本的には史実どおりに進むのでしょう(未確認w)策謀の乱れ飛ぶ争いが描かれます。少年時代の勝元、
義政の様子が微笑ましいだけにその落差が激しく感じられます。1989年作のいわば晩年の作品で忍法帖の
ように私が好きなトンデモ忍法は出てきませんが人間の暗黒面を描く筆致が却って渋く光る気がしました。

もう一編収録されている「室町の大予言」は表題作の前日譚に当たる義政の父 義教の物語です。
史実基づいた義教を将軍に選んだ方法が驚愕です。


この作品は「蛇鏡」同様、電子書籍の「eBookJapan」で読みました。
「トランクルーム利用者1万人突破記念」とのことでまたまた贈られたeBook図書券で購入しました。
eBookJapan → http://www.ebookjapan.jp/cpyahoo/

登録しておくだけで無料で読めるのはちょっとありがたいです。
「立ち読み」だと普段でも無料で読めるので4コマ漫画なんかをたまに読んだりもしています。

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実相寺昭雄_『ウルトラマンの東京』

「実相寺昭雄_ウルトラマンの東京」を読了しました。→読書リスト

映画でいちばんむずかしいのはロケである。
限られた時間の中でもっとも効果的な撮影をするために、
特撮とはちがったとんでもない苦労もする。
ウルトラマンのロケ地を歩きながら、怪獣に夢を託した男たちの熱い想いと、
大変貌をとげようとしていた当時の東京を再現する。

裏表紙より

前に読んだ2つはウルトラマンやウルトラセブンの製作現場の裏話を明かす内容で大変興味深く読めました。
これはちょっと趣が違い、当時(昭和40年代前半)監督を務めた著者がロケ現場を再訪するという内容です。
わずかに残った当時の面影を見つけて懐かしみ、全く様変わりしたのを見て悲しみに浸ります。
円谷プロが世田谷の砧にあるためロケ現場はその周辺が多く、東京は怪獣の被害に遭いやすいのでした(笑)

私がテレビシリーズを見たのは子供の頃ですから興味の対象は専らウルトラマンや怪獣です(今でもですが)。
そのため著者が思い入れを持っているロケ現場の情景などに対する番組内での記憶は曖昧です。
随所に馴染みのある地名は出て来ますが私が知っているのは当時とは既に大きく変化したあとの場合が多く、
あまりピンと来ませんでした。それでもガヴァドンが現れたのは多摩川の川原だったり、メトロン星人の舞台と
なったアパートは溝の口だったり、「おぉっ」と思うポイントもいくつかありました。


ニュートン 2008-6 万能細胞

【NEWTON SPECIAL】
全世界が注目する
究極の万能細胞
山中教授の「iPS細胞」。いったい何がすごいのか?
監修 西川伸一 協力 山中伸弥/岡野栄之/ジェームズ・トムソン
世界的な注目を浴びる新しい万能細胞,「iPS細胞」。
これまでの万能細胞にくらべて,いったい何がすぐれているのか?
日米の研究リーダーが語る「次なる展望」とは?



・「がん細胞」とはどんな細胞か?
万能細胞との共通点やちがい,がん化のしくみなどを徹底紹介!
協力 宮園浩平
・星雲─光彩を放つ 
ガスとちりの雲が生む宇宙の芸術 
協力 田村元秀 画像 NOAO
・船を襲う巨大波を追え!
ビル7階の高さにまで達する,“海のならず者”の正体にせまる
協力 冨田 宏/光易 恒
・クロマニヨン人が残した立体芸術
初公開 彫刻版ラスコー
協力 阿子島 香
・受けつがれるチンパンジーの知性
30年目の「アイ・プロジェクト」
協力 松沢哲郎

科学雑誌「Newton」バックナンバー → http://www.newtonpress.co.jp/science/newton/index2.html

ニュートン 2008-6を読みました。
SUNNYさんの記事に「ES細胞???だったのでウィキペディアしてきましたが、やっぱり???です。」と
コメントしたところ紹介していただいたので読んでみました。

以下、自分なりに理解した内容を大雑把にまとめてみます。私の誤解に起因する誤りがあるかもしれません。
その点はご容赦ください。また誤りをご指摘いただけるとありがたく思います。



「ES細胞」
・受精卵から100個ほどの細胞のかたまりとなった胚盤胞まで育て、その内部から取り出した細胞を培養して得られるもの。
・ES細胞は神経細胞、血球、心筋などさまざまな細胞になることが出来るので再生医療の切り札と言える。
・ただし、ES細胞をヒトの医療に実用するには次の二つの障害がある。
①倫理問題
子宮にもどせば赤ちゃんになる胚をこわしてヒトES細胞をとりだすことへの批判が根強い。
②拒絶反応
移植してもES細胞と患者のDNAは異なるため拒絶反応が起きる。

「クローンES細胞」
・患者の細胞の核を受精卵に核移植してから作るES細胞のこと。
・患者と同じDNAを持つので拒絶反応の心配は無い。
・倫理問題は依然として残る。
・クローン人間づくりにつながる可能性がある。

「iPS細胞」
・患者の細胞に初期化因子をレトロウィルスベクターを用いて送り込みES細胞と同じ性質を持たせたもの。
・倫理問題、拒絶反応、両方の問題をクリアする。
・レトロウィルスベクターを用いたことによりガン化の心配がある。

ES細胞なりiPS細胞から必要な細胞を作り出す方法についてはこの特集では特に触れていませんでした。
その他にも実際に治療に使うのには課題が山積しているようです。


先日読んだ『みるみる理解できる相対性理論』同様美麗なイラストと丁寧な解説で、生物学については
高校の授業の知識しかない私でも現在の科学の最先端を垣間見ることが出来ました。
実用化はまだまだ先の話のようですし、私の生活には直接関係は無さそうです。
強いてあげればバイオホラー系の小説を読むときの基礎知識になるくらいでしょうか?(笑)

ニュートンはこれまでもパラパラと読み飛ばしたことはありましたがちゃんと読んだのは初めてでした。
特集はさすがに力が入っていて読み応えがあります。また他の記事は軽く読めて面白いものが多いです。
これからはたまには読んでみようかと思います。

平井和正/石ノ森章太郎_『幻魔大戦』

「平井和正/石ノ森章太郎_幻魔大戦」を読了しました。→読書リスト

宇宙破滅をもくろむ幻魔大王と戦う地球のエスパーたちの、明日なき戦いの物語!!

amazonの紹介文より

平井和正氏の同名小説は以前(2004年)読みました。最初のうちはエスパーと幻魔の戦いを描くSF活劇
だったのですが、途中から主人公を教祖とする宗教色の強いお話になってしまいました。
小説の方も根強い人気がある作品なので嵌れば面白いのでしょうが私にはちょっと…という感じでした。

で、この漫画ですが今調べたらこちらが大元だったようです。つまり漫画版の幻魔大戦の小説版リメイクが
私が以前読んだ幻魔大戦だったのでした。これは小説と漫画の関係としては珍しいですね~

読んだ順番は逆になってしまいましたが、漫画版は小説版の序盤のSF活劇の部分だけで構成されています。
鬱屈したサイコキノ:東丈、尊大なテレパス:ルーナ姫、不良黒人少年のテレポーター:サンボ、などの
エスパーたちが迫り来る幻魔に対し、時に協力しながら、また時に反目しながら戦っていきます。
今更ながら石ノ森章太郎氏の絵は素晴らしく幻魔との戦いは小説のイメージどおりでした。
特にニューヨークを舞台にした巨大肉ボールの場面は圧巻です。実際には小説の方で漫画を忠実に再現した
のでしょうが(笑)

漫画は打ち切りの憂き目にあったようで、正にこれからという場面で終わってしまっています。
小説もずっとこの路線で書いていてくれたら楽しめたと思います。個人的にはちょっと残念です(笑)

『寺田寅彦随筆集 第一巻』

「寺田寅彦随筆集 第一巻」を読了しました。→読書リスト

明治時代の物理学者にして随筆家、『吾輩は猫である』の水島寒月のモデルと言われる寺田寅彦の随筆集。

私が著者の寺田寅彦氏を知ったのは荒俣宏作のサイキック小説「帝都物語」の登場人物としてでした。
小説の中では主人公(?)の魔人 加藤保憲に科学力をもって対抗するという重要な役割でした。
小説を読んだのは映画が公開された20年程前でしたが、随筆家という側面があることを最近知ったので
読んでみることにしました。

本を開いてまず「字が小さい」と思いました。先日読んだ「ミステリーのおきて102条」は40字×18行でしたが
本書は43字×19行で、ページあたりの情報量は1.1倍になっています。
読み始めると言い回しが少々硬く感じられます。読みやすい最近のエッセイと同じ感覚では読めません。

大雑把に〈日々の雑記〉〈ヨーロッパへの旅行記〉〈科学や文化に対する考察〉に分けられます。
物理学者ということなのでもう少し堅い内容を想像していましたが、簡潔でありながら鮮やかな描写がちりばめ
られる文学の香りが漂う文章となっています。
昔の知識人は芸達者だったと実感しました。言葉の端はしに垣間見える上流意識はちょっと不快ですが(笑)

〈日々の雑記〉のなかでは何枚描いてもうまくいかない「自画像」のくだりが面白かったです。
私も絵を描いてみたくなりました。絵の具とか筆とかは大変そうだからPCを使ってトライしてみましょうか。
ブログで公開する勇気はありませんが(笑)

〈科学や文化に対する考察〉では昔書かれたものとは思えないような鋭い考察が散見されます。
平成の世に生きる我々にとっても役に立つような考え方も多くみられます。
ちょうど相対性理論が世に出た頃に書かれた随筆なので私が先日四苦八苦してなんとか解った気になった
ものを著者は当時完全に理解していたと考えると少なからず複雑な気持ちがします(笑)
全体の論調で「科学の発展=人間の幸福」というのは無条件の前提になっています。
現代でこそ疑問を感じられることもある前提ですが科学に対して無邪気な時代であったことを反映していると
思われます。

読み始めた頃には少々硬く感じられた言い回しも慣れれば気にならなくなりました。
この時代に書かれた文章はこれまではあまり縁がなかったので苦手意識が先行していました。
しかし、これは大変面白く読め、時代を超え著者に親しみを感じるほどです。

光瀬龍/萩尾望都_『百億の昼と千億の夜』

「光瀬龍/萩尾望都_百億の昼と千億の夜」を読了しました。→読書リスト

伝説のアトランティス王国の痕跡を求める旅でギリシャの哲学者「プラトン」は高度な文明を持った村エルカシアに到着する。プラトンはエルカシアの宗主の啓示を聞いたあと気を失う。目を覚ましたプラトンは自分がアトランティスの司政官「オリオナエ」であると自覚していた。

SFマガジン 2006-4で原作の小説がオールタイム・ベストSFの国内長篇部門の第1位になっていました。
そして、その記事にめにいさんからいただいたコメントで漫画化されているのを知りました。
タイトルからちょっと難しそうなイメージがあったので漫画の方を読んでみることにしました。

ファンタジーテイストのSFで「神」をテーマにし、終末観と救済など、宗教・哲学的色彩も濃いものです。
登場人物もプラトンのほか、「阿修羅王」「シッタータ(釈迦)」「ナザレのイエス」などとなっています。
私はどちらかというとサイエンステイストのSFが好みで、宗教にも疎いので登場人物の性格付けにどういう面白みがあるのかには曖昧なイメージしか持てませんでした。

終末を迎えることを是とする『シ=弥勒=委員会』とそれに対抗しようとするオリオナエ、シッタータ、阿修羅王の対決というのが大雑把な流れです。アトランティスの超文明、虚数座標、空間の歪、熱エントロピーなどなど科学SF的な表現もありますが言葉を散らすことによって雰囲気を出しているだけで特に深い意味は無さそうです。
エンディングで阿修羅王が聞く声は何を意味するのか?想像力を掻き立てられます。

例えば水槽の魚にとって私たちは神に等しい権限を持っています。それに相当するものが我々自身にも存在すると考えることは想像に難くありません。さらにその世界にも…入れ子構造の世界を考えるとどこまでも止まらなくなってしまいます。

漫画とはいえなかなか難しい壮大なテーマの作品でした。原作の小説もかなり評価が高いようです。
ストーリーはおおよそつかめたので小説を読んでも理解できそうです。気が向いたら読んでみます。

「ホウ酸ダンゴ」 再び(笑)

去年の今頃設置した「ホウ酸ダンゴ」のおかげで我が家の「G」は絶滅したと思われていました。
しかし、今夜久しぶりに台所でその姿を見かけました(>_<)

ホウ酸ダンゴの有効期間は6ヶ月と書いてあるのでこれは仕方のないことです。
で、早速去年の残りを仕掛けてみることにしました。

去年は6畳のワンルームに8個仕掛けましたが今年は食べた形跡のある3箇所だけにしました。
一旦開封したものなので少々心配でしたがゴキブリを誘引する独特の臭いはするので大丈夫そうです。

また去年のような絶大な効果はあるでしょうか?
もしダメだったら安いもの(16個入りで298円でした)なので新しく買って設置しようと思います。

宮部みゆき_『模倣犯』

「宮部みゆき_模倣犯」を読了しました。→読書リスト

公園のゴミ箱から女性の腕が発見される。警察の捜索により同じ公園から行方不明の女性のハンドバッグも発見された。しかし、腕はその女性のものではないらしい…
バラバラ事件発生に世間が騒然とする中、テレビ局に一本の電話が入る。

2002年版「このミステリーがすごい!」で国内1位になったり、中居正広主演の映画がヒットしたりなかなか話題になった作品でしたが、「美味しいものはあとの楽しみに取っておく」性格の私は今更読んだのでした(笑)

【第一部】
腕の発見から犯人が電話で世間を翻弄する過程を経て意外な結末を迎えるところまでが描かれます。

とにかく犯人の徹底したサイコキラーぶりが印象的です。ここまで悪辣なサイコキラーにはこれまでお目にかかったことがありません。私は小説に出てくる悪者は好きな方ですがこの非道ぶりには閉口しました。
あとはテレビを大規模に使った劇場型犯罪というのもすごいです。以前読んだ『推理小説』も劇場型犯罪でしたが宮部氏は格の違いを見せつけてくれました。

【第二部】
犯人がこの犯罪を引き起こすようになったいきさつや犯罪の様子が語られます。

ここではおぞましい犯罪の内幕が詳細に語られます。この時点で真実は全て暴露されるので読者は神の目線で全体を俯瞰する立場になります。犯人の悪辣さに憤りながら読み進みました。意外と存在感を感じたのはサイコキラーの片割れの「浩美」です。人間的に弱い部分を「ピース」につけこまれるかたちで最悪の状況を作っていってしまう過程は読み応えがありました。

【第三部】
終わったと思われた事件に新たな展開が加わり真実が明るみに出ます。

汚名を着せられた「和明」の名誉を挽回し真犯人に鉄槌が下ることを期待しつつ読み始めたのですが、あまりに意外な展開に翻弄され途中でやめられず一気に読んでしまいました。

ピースは賢そうに見えて結構迂闊ですねぇ、そして意外と弱い。普通の犯罪小説は一見鉄壁に見えるものを崩していくという過程を描きますが、敢えてそのパターンをはずしているようです。自信満々で完璧だと思いこんでいる(だけ)のが一見弱く見える者に見事にしてやられるのは爽快でした。この迂闊さ、弱さが第二部までは記号のような存在でしかなかったピースに少しだけ人間味を与えています。

可哀想なのは高井兄妹です。「由美子」は最初のうちは魅力的だったのですがこんな風になってしまって…
兄の汚名を晴らすために大活躍すると思っていたのですが(>_<)

滋子の最後の攻撃はなかなか見事でした。ここに来てタイトルの意味がわかるとは…
ただ少し前でネタバレさせすぎていて炸裂したときの(読者への)効果がいまひとつ薄かったのが残念です。
もうちょっと上手く伏せてあればね~(笑)


この作品には長いという批判があるようですが、私もそれは感じました。なにしろ枝葉が多い。その枝葉の部分も楽しめるので良いのですが、剪定してすっきりさせて本筋を際立たせるという選択もあったような気がします。
週刊誌に連載されたものをあまりいじるわけにもいかないのでしょうが…

「携帯電話」「電話相談」「建築家の推理」など置き去りにされた伏線がいくつかあるのが気になります。
普通なら犯人に結びつく重要な情報なのですがちょっと枝葉扱いにされてしまっています。

ちょっと不満も書きましたが全体的には評判に違わぬ面白さでとても楽しめました。この他にも「名もなき毒」
「楽園」など評判の作品が残っています。これはまた楽しみにとっておきます(笑)

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