*小林泰三_『玩具修理者』

「小林泰三_玩具修理者」を再読しました。
1996/10/8に読了した作品
どんなに壊れた玩具でも、その玩具修理者は直してくれた。
“私”は誤って死なせてしまった弟を彼のところに連れていった。弟は生き返った・・・・・が。
生と死を語る奇妙な“修理者”が誘う幻想の世界。

玩具修理者(Amazonの紹介文より)
第2回日本ホラー小説大賞短編賞受賞の表題作に書き下ろしの中編を加えた構成です。

「玩具修理者」は作者得意のグロテスク描写が特徴のホラーです。なかなか激しくグロテスクなので読者を選びますが… 「ようぐそうとほうとふ」「くとひゅーるひゅー」「ぬわいえいるれいとほうてぃーぷ」など意味不明な単語が出てきますが、これはクトゥルー神話(私は未読)に由来するらしいです。話の展開自体は想定の範囲内ですが、最後の3行でちょっとやられました。

酒場で出会った男は“私”の大学時代の親友だと言う、しかし私は彼を知らない。
興味を惹かれその話を聞いてみることにしたが…

酔歩する男
実は今回は「酔歩する男」の方を再読したかったのです。簡単に言うと、意識を失うとタイムスリップしてしまう男の話です。導入部で少しグロテスクな描写がありますがその点は比較的穏便です。眠るたびにランダムにタイムスリップしてしまうので、因果関係が崩壊し眩暈がするような展開に翻弄されます。また眠るだけではなく死んでもタイムスリップしてしまうので結局… 「人間の意識が時間の流れを作り出している」「時間は本来連続していない」という大胆な想定がこの作品のキーポイントとなっています。また「菟原 手児奈(うない てこな)」という意味不明な名前の人物が出てきますが、こちらは日本の伝説に由来するらしいです。これまでに時間SFは数多く読みましたがこれほど壮絶なタイムスリップものは他にはありません。題名どおり読むと酔っ払います(笑)

表紙絵はこちら
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北村薫_『覆面作家の夢の家』

「北村薫_覆面作家の夢の家」を読了しました→読書リスト
12分の1のドールハウスで行われた小さな殺人。そこに秘められたメッセージの意味とは!?天国的美貌を持つミステリー界の人気作家「覆面作家」こと新妻千秋さんが、若手編集者、岡部良介とともに、残された言葉の謎に挑む表題作をはじめ、名コンビが難事件を解き明かす全3篇を収録。作家に探偵、おまけに大富豪のご令嬢と、様々な魅力を持つお嬢様探偵、千秋さんの名推理が冴えわたる
“覆面作家”シリーズ第3弾。

裏表紙より

「覆面作家」シリーズ全3作の完結編です。千秋と良介の関係を軸に3つの謎が解かれていきます。

収録作品
・覆面作家と謎の写真
・覆面作家、目白を呼ぶ
・覆面作家の夢の家

ミステリーとしては本当の殺人事件を扱う「目白を呼ぶ」が面白かったです。「交通事故に見せかけて」という定番の殺人なのですが、これは実行できそうな気がするので機会があったら試してみたいと思います(笑)
いかにも推理小説らしい展開で、このシリーズは基本的には日常の謎なのですが中にはこういうのもあるので油断できません。

表題作の「夢の家」は手の込んだ暗号ものです。あるものが謎解きの鍵になるのですがその辺に興味があればより楽しめるでしょう。小道具として使われるドールハウスはなんか高尚な趣味のような気がしていましたが、手法的にはプラモデルで作るジオラマとあまり変わらないようなのでちょっと親近感が沸きました。

良介と千秋の関係もちょっと進展があってほのぼのとした結末となっています。仕事にかこつけて千秋とのデートを画策する(?)良介の公私混同ぶりはちょっとひどいですが(笑) 少々残念なのは千秋の活動的(暴力的)な外の顔がいまいち影を潜めた点でしょうか?ハラハラする感じが好きだったのですが…
解説の有栖川有栖氏も述べているとおり千秋のけったいな二重人格の謎は放置されています。どういう子供時代を送るとあんなのになるのでしょう?最後に登場した千秋のお父さんによる児童虐待が原因ということはないとは思いますが(笑)

作者の北村薫氏は先日「鷺と雪」(私は未読)で直木賞を受賞されました。以前候補になって受賞を逃した「スキップ」「ターン」はとっても好きな作品です。今度は受賞作を含む「ベッキーさんシリーズ」を読もうと思います。

G・R・R・マーティン_『フィーヴァードリーム』

「ジョージ・R・R・マーティン_フィーヴァードリーム」を読了しました→読書リスト
汽船会社を経営するアブナーは最速の蒸気船フィーヴァードリーム号を完成させる。建造に莫大な資金を出した共同経営者のジョシュアとその仲間は一風変わった生活習慣を持っていた。昼間は船室に閉じこもり夜にならないと姿を見せないのだ。
いつもお世話になっている藤中さんが好きな小説にあげていたので読んでみることにしました。

南北戦争前1857年のアメリカ、長大なミシシッピ川を舞台とした吸血鬼ものです。
ジョシュアの正体は吸血鬼で、それに気付いたアブナーが… という展開は定番とも言えますが、そこは一捻りしてあります。奴隷制下という時代背景、ミシシッピ川流域という舞台が普通の吸血鬼ものとは一味違う雰囲気を出しています。

平たく言うと「アブナーとジョシュアが種族を超えて協力し、共通の敵と対決する」という筋立てですが、お約束の部分と意外な部分が程よくバランスされて、面白くて読みやすい高度なエンターテインメントに仕上がっています。主要登場人物(?)について思うところを書き連ねます。

・フィーヴァードリーム号
本書の題名でもある「どんな船よりも速く美しい、最高の船」 彼女はもし機会があったなら必ずエクリプス号を打ち負かしていたことでしょう。表紙にイラストがないのが個人的に残念です。この本を読んで外輪船のことをちょっと調べましたが詳しいことはあまりわかりませんでした。有名な外輪船とスクリュー船の綱引きは1845年だったのですでにスクリュー船の優位は証明されていたのですが、浅い喫水が特徴で河川での運航には向いているとのことです。

・アブナー・マーシュ
運は悪いようですが、男気があり、友情に厚く、人望もあり、頭も悪くない好人物です。「川でいちばん醜い男」という点も私にとっては好感度をあげるポイントです(笑) 彼の機転による最後の逆転は見事でした。

・ジョシュア・ヨーク
吸血鬼でありながら所詮人間には敵わないということを認識して共生を考えています。ただ、目的は自分の種族の存続で、そのための人間との協力というスタンスです。アブナーに平気で嘘をつくなど、ところどころで見せる非人間的な行動が種族の違いを思い出させます。

・ダモン・ジュリアン
対する敵役は強大な力を持った老吸血鬼です。少々痴呆症気味(?)で暴走、自暴自棄的な行動をしますが、奴隷制度に手痛い批判をするなど鋭いことも言います。彼らが人間を「家畜」扱いするのに対しても、我々が牛や豚に同情しないのを考えれば全く批判できないとも思えます。

・サワー・ビリー・ティプトン
自らの欲望のためにダモンのために働く人間です。ダモンは種族が違うのに対して、人間の醜さを凝縮した感じです。その徹底した悪は爽快でさえあります。あっさり死んだのかと思ってちょっと寂しかった(笑)のですが最後に結構良い働きをしてくれました。

時を現代に移したエピローグもなかなか渋くて秀逸でした。
とても面白かったです。藤中さん、ご紹介ありがとうございました。

表紙絵はこちら

「風の海 迷宮の岸」再読

引き続き十二国記シリーズの再読です。

小野不由美_『風の海 迷宮の岸』初読の記事はこちら

【再読の感想】
アニメを見た後なので、蓬山の様子、使令、騎獣など文章では想像しにくかった部分をアニメの絵柄のイメージで読めました。もともとのホワイトハート版のイラストがアニメ調なのでグインのような違和感もありません。
饕餮を使令に下すシーンがお気に入りです。アニメでも良かったですね~

初読のときと同様、景麒の気の利かなさ加減が引っかかりました。泰麒に初めて会ったときの受け答えといい、泰麒に驍宗の正当性を教えるやり方といい、あまりにも気が利きません。この後、舒覚を失道させたり、陽子とはぐれたり、なんというか失策ばかりのような気がします。舒覚を失道させたエピソードは是非書いてもらいたいものです(笑)

通勤電車内で再読したのですが、夢中になって2回も乗り過ごしてしまいました(^_^;)

巨人の星


ギャオ「巨人の星」を鑑賞しています。
全182話 毎週水曜2話更新 現在 第3~4話 公開中
1968~71年の作品

言わずと知れたスポ根アニメの不朽の金字塔です。巨人軍の星となるため、父 一徹により野球の英才教育を受けて育った星飛雄馬が、花形満を始めとするライバルと死闘を繰り広げていく物語です。子供の頃に再放送を見て「消える魔球」のイメージは強く残っていますが、少年時代や、星雲高校時代のことはよく覚えていません。
今回最初から見られたのはラッキーでした。

第2話まで見ましたが、ここまでで「一徹のちゃぶ台返し」「大リーグボール養成ギブス」「子供なのにスポーツカーを運転する花形満」などの名シーン(?)が登場しました。古いアニメなのですが絵の質はとても良く、物語を伝える手段と考えると最近のアニメに全く負けていません。川上哲治の回想シーンでは実写とアニメの合成があり、今見てもなかなか斬新です。

序盤は少年 飛雄馬と父 一徹の確執が中心に描かれるようです。良く頑固親父の象徴として扱われる一徹ですが、言うことに理がある部分もあり実は良い父親だったりもします。この辺は意外に感じましたが、見ている私が歳をとった証拠なんでしょうね(笑)

山本弘_『詩羽のいる街』

「山本弘_詩羽のいる街」を読了しました→読書リスト
悩めるマンガ家志望の青年が公園で詩羽(しいは)と名乗る女性と出会う。誘われるまま街中をデートするうちに彼女を基点としたネットワークが街に張り巡らされていることに気付く。人に親切にすることを仕事にする彼女の力で賀来野の街の幸せの総量が増えていく。
家を持たず、お金も持たず、賀来野の街で生きる謎の女性「詩羽」を中心とした物語です。
・第一話「それ自身は変化することなく」
・第二話「ジーン・ケリーのように」
・第三話「恐ろしい『ありがとう』」
・第四話「今、燃えている炎」
四編の連作になっていて語り部はそれぞれ違うのですが、深い関連があり登場人物の絡みも多い構成になっています。第四話の語り部がちょっと意外な人物でニヤリとしました。

作者のオタク趣味が全開でアニメや漫画に関するウンチクが満載です。私も嫌いではありませんが、どちらかというと暇つぶし程度なのでここまでテンコ盛りだと少々食傷します。ちょっと紙面を割きすぎな気もします。

詩羽は一体何者なの?という謎が終始つきまといます。動機といい、情報力、行動力といい只者じゃありません。わざと実在感の無い描き方したうえ登場人物に実在を疑わせる発言をさせたりして読者を煙に巻いたりもします。こういう読者を巻き込む手法(メタフィクションというらしいです)は好きです。と言うか、自分から巻き込まれに行きます(笑)

で、登場人物の中で一番身近に感じたのはなんと長船先生でした(笑)  私自身は(当然)こんなことはやりませんし、その楽しさも理解できませんが、世の中にはこのような悪意が存在するのは事実です。そして詩羽の情報力、行動力には確かに薄ら寒い恐怖を感じます。詩羽に悪意は無いとしても敵に回したら怖すぎますね~
いったんは逃げ出してしまった彼が最後の最後に…というエンディングには救われました。もしかしたら長船先生の救いがこの作品の最大のテーマなのかもしれません。

作中で登場人物に語らせていますが、この作品自体も「アイの物語」以上に「説教臭い」「作者の生の声が出すぎている」傾向があります。それは論理(理想とか愛とかではなく)に基づいた反戦主義であり、友愛主義です。詩羽の存在はアイの物語の「詩音」「アイビス」などのアンドロイドに重なる部分があります。その主張の内容自体は私も賛同しますし論理的な語り口には好感を持ちますが、「作品として昇華されている」「エンターテインメントとして安心して読める」と言う点で怪獣小説「MM9」の方が好みです。
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