鈴木光司_『エッジ』

「鈴木光司_エッジ」(A-)を読了しました。→読書リスト
理由のわからない失踪事件が頻発する。フリーライターの冴子は調査を始める。彼女の父親も18年前に忽然と消息を絶っていたのだった。
一方、遠方の恒星が突然消滅する、πの計算結果に0が並ぶ、など科学的な異変が観測される。
傑作「リング」の作者による10年ぶりの長編ホラー小説です。なんか最近は主夫業に専念したり、子育てのエッセイを書いたりしていたようですがやっと「こっちの世界」に復帰してくれたようです。

冴子がテレビ番組のスタッフとして失踪者の調査を行う前半は地味ながらリングを彷彿とさせる展開です。犯罪被害にあった、家族内のトラブル、借金苦の夜逃げ、など現実的な失踪理由を潰していく過程はミステリータッチでなかなか読みごたえがあります。ただ、プロローグで超常現象であるとネタばれをしてしまって効果半減なのが少々残念です。

上巻の最後に起こる事件から物語は個人の失踪事件から未曾有の規模のカタストロフィに発展します。古代遺跡に見られるオーパーツやオーバーテクノロジー、マリー・セレスト号などの歴史上の失踪事件、果ては生物の発生、進化などなどの科学用語を駆使(濫用?)して一連の事件の真相が語られます。私は途中までは少しずつ読んでいたのですがこの部分に入ってからはパワーに圧倒され一気読みしました。ただし、(濫用?)と書いたようにその内容はかなりハチャメチャです。比較的緻密だった前半の展開に比べると少々ギャップを感じます。科学用語の濫用は知らない人には無意味ですし、(私のように)ちょっと知っていると疑問が残りますし、よく知っている人には(たぶん)噴飯ものなのだと思われます。ある人物の正体はあんまりですし、カタストロフィからの脱出方法と行き先は安易ですし、他にも突っ込みどころは多々あります。しかし既存の物理学が成立しなくなる「相転移」がキモなので、科学的、論理的におかしくても問題ないのかもしれません(笑)

ハチャメチャさ加減を含めてB級ホラーとして十分に楽しめました。ただ、アマゾンの作者自身による宣伝動画をみると「そこまで言うか?」という感じもしますが(笑) リングのようなおどろおどろしさはないので鈴木光司入門には良いと思います。

表紙絵はこちら
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No title

ホラーというだけで身構えてしまいますが、恐怖度はどんなもんでしょう?
実はハチャメチャなのは嫌いじゃないんですよね。恐いのは嫌いなのが問題だ (^^;)

そういえば紹介されて買ったπの本。
記事にはしてないけど、あれはなかなか面白かったっす (^^)

No title

たしかに妙なパワーがある小説でしたよね。その分突っ込みどころもあって、その突っ込みどころというのが逆に好きかも(笑) そういえばπって、途中けっこう00が並ぶところがありますね。私は科学用語をよく知らないから、下巻のその部分はかなり飛ばし読みしてしまったかも(汗)

No title

ほほう~~鈴木光司というと、怖いばかりが先に立ちますが、ツッコミどころ満載ですか?
そういえば、「シャッター・アイランド」を見てきましたが、宣伝文句ほどではないと思いましたねえ。予想通りでしたよ(笑)

No title

>酒競輪さん
SFテイストが強いんでそんなに怖くないですよ。直接的なスプラッタ描写はありません。
身近なπですが意外と奥が深いですよね。

No title

>藤中さん
私も突っ込みどころを愛します。作者はあえて残したのかもしれませんね~(笑)
藤中さんもニュートンを読んでるから科学用語の知識は私と同じくらいはあるはずですよ。
ま、読み飛ばしても問題ないですが(笑)

No title

>めにいさん
リングでも映画とかドラマのイメージほど小説は(直接的には)怖くないんですよ。
宣伝もやりすぎると内容とのギャップがあって逆効果ですね~(笑)
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